N95規格で定められた値よりエアロゾル等の微細粒子を通しにくく、吸気抵抗が低いマスク
国立循環器病研究センター(以下、国循)は3月9日、現在開発中の純国産・医療用高性能マスクについて、新たに作成した量産試作品の評価試験を開始すると発表した。これは、国循の西村邦宏予防医学・疫学情報部長および白石公教育推進部長と、株式会社クロスエフェクト、ニプロ株式会社、ダイキン工業株式会社(以下、ダイキン工業)らの共同研究グループによるもの。
画像はリリースより
コロナウイルス診療における医療関係者の感染防御には、米国・国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health:NIOSH)の規格を満たしたN95マスクが必須だが、今なお爆発的需要増大のもとで、世界的に枯渇した状況にある。
開発チームによる共同開発の結果、N95相当の医療用高性能マスクの量産試作モデルの仕様が確定した。ダイキン工業は息がしやすく、かつ高性能のフィルター効果が持続する濾材(フィルターを構成する空気濾過用の材料)の開発に世界で初めて成功し、この濾材を用いてマスク用フィルターを製造した。クロスエフェクトは上記フィルターをもとに、国循内のオープンイノベーションラボを活用し、精密3Dプリンティングを応用した特有のRapid Prototype技術(金型を使わずに迅速に試作品を製作する技術)を用いた試作を繰り返した。N95規格を制定するNIOSHの規格に従いながら、マスクの機能性、デザイン性、小型化などの課題を解決し、洗練されたデザイン設計に至った。ニプロは量産化を目指し、各部材の最適化設計を行った。量産を考慮した部品等の考案や各部材の構造見直し、成型方法の検討を行い、生産・量産に適した設計及び量産体制の構築に至った。
このように開発された新規開発マスクについて、N95規格に準じた試験を外部試験機関において実施した結果、N95規格で定められた値より粒子捕集効率が高く(=エアロゾル等の微細粒子を通しにくい)、かつ吸気抵抗が低い(=呼吸がしやすい)ということを示す結果が得られたとしている。
日本国内での販売は2021年6月上旬を予定、当面は1サイズで安定供給を最優先
国循では、国循病院内にて約300人の医療従事者を対象に、2021年2月10日から約1か月間、新規開発マスクの評価アンケートを実施。対面による患者の診察対応時や、エアロゾルが発生するような手技(気管内吸引、気管内挿管、下気道検体採取、内視鏡検査等)を伴う診療場面等で新規開発マスクを着用し、連続作業可能時間、使用者の主観による呼吸のしやすさ等の評価を行っている。
また、3月中に新規開発マスクを用いたボランティアによる心肺運動負荷(CPX)試験を実施する。ボランティア20人に新規開発マスク及び既存メーカー複数社のN95マスクを着用してもらい、軽度の労作下における血圧、心電図、呼気ガス運動耐用能および連続作業可能時間等について評価を行うことで、新規開発マスクと既存品との比較を行う。さらに、3月以降には、飛沫挙動シミュレーションによる評価も予定しているという。
上記の国循における評価を通じて、開発品の臨床での使用上の問題点を追及し、改良を行ったうえで最終的な形状を確定する。形状確定後、ニプロにて量産を行う予定。なお、当面は1サイズだが、将来的には複数サイズで展開する予定だという。
日本国内での販売は2021年6月上旬を予定しており、販売開始に向けて国内での安定供給を最優先に、設備投資等の準備・強化を進めていくとしている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース