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母乳/粉ミルク、授乳時の母親の働きかけ方と産後うつの関連を明らかに-富山大

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2021年03月10日 PM12:15

授乳中に乳児の目を見たり話しかけるといった母親の行動と、産後うつは関連するか

富山大学は3月3日、産後6か月までの乳児への栄養方法(母乳か粉ミルク)、授乳時の乳児に対する働きかけ、さらに、産後6か月時点の産後うつとの関連について調査し、その結果を発表した。この研究は、同大エコチル調査富山ユニットセンターの嶋尾萌子リサーチコーディネーター(2019年まで在籍)、松村健太特命助教らのグループによるもの。研究成果は「Journal of Affective Disorder」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

これまでに、粉ミルクを一切使わず母乳のみで育てる完全母乳育児は子どもの免疫力や発育を向上させ、母親の乳がんや卵巣がんを減らすといった母児ともにプラスの効果が示唆されてきた。世界保健機関(WHO)は、産後6か月間の完全母乳育児を推奨している。一方、母乳育児が産後うつに与える影響についても検討が行われてきたが、両者の間に関連があったという報告と関連が見られなかったという報告があり、安定した結果が得られていなかった。

そこで研究グループは、エコチル調査に参加している親子について、産後6か月までの栄養方法(母乳か粉ミルク)と産後うつの関連を調べた。さらに、母乳育児の期間の検討に加えて、授乳時に乳児の目を見たり話しかけるといった行動と産後うつに関連があるかも併せて検討した。

6か月間の完全母乳育児をした群は、しなかった群と比較して産後うつになる割合が低い

7万1,448人の母親を対象に、妊娠中2回、産後1か月1回、産後6か月1回の、合計4回質問票調査により授乳および産後うつの状況、その他、解析に必要な情報を収集した。産後6か月の時点で尋ねた栄養方法(母乳あるいは粉ミルク)と与えた期間によって、参加者を次の5つのグループに分類した。
グループ1:母乳を6か月間継続しなかった
グループ2:母乳を6か月、粉ミルクを5~6か月与えた
グループ3:母乳を6か月、粉ミルクを3~4か月与えた
グループ4:母乳を6か月、粉ミルクを1~2か月与えた
グループ5:母乳のみを6か月間与えた

産後うつの評価は、エジンバラ産後うつ尺度(EPDS)を使用した。EPDSは10項目の質問の回答を0~3点の得点で評価し、合計9点以上となった場合、産後うつと判定した。研究では、産後1か月時と産後6か月時の状況を判定し、産後1か月時で産後うつ傾向のない人を選び、産後6か月時点で産後うつであったかを評価した。次に、産後1か月時点の授乳中の母親の行動として「赤ちゃんの目を見たり話しかけたりしている群」と「他のことをしている群(テレビ・DVDを見る、新聞・雑誌を読む、携帯電話やパソコンを使う、家事を行うなど)」の2つに分け、産後6か月時点のEPDSとの関連を検討した。

分析の結果、母乳のみを6か月間与えたグループ5は、他グループに比べて産後うつになるリスクが低いことがわかった。また、母乳あるいは粉ミルクを与えた期間にかかわらず、授乳中に「赤ちゃんの目を見たり話しかけたりしている群」が、「他のことをしている群」よりも、産後6か月時点での産後うつになるリスクが低いことがわかった。さらに、グループ5に含まれ、かつ授乳中に「赤ちゃんの目を見たり話しかけたりしている群」は、最も産後うつのリスクが低いことがわかった。

母乳育児を勧めるだけでなく、赤ちゃんとの関わり方について適切な情報をすることが重要

今回の研究から、母乳育児を行うことが産後うつに良い影響を与えることはもちろん、たとえ母乳育児ができなくても授乳中に乳児の目を見たり話しかけたりすると、そうしない場合より、産後うつに良い影響を与えている可能性が示唆された。ただし、今回は質問票を用いた観察研究であるため、因果関係を結論づけることはできていないとしている。

「乳児の目を見たり話しかけたりすることで愛情ホルモンといわれるオキシトシンが分泌されることが関係しているのではないかと考えられる。これらの結果をふまえ、乳幼児を育てるお母さんに対し、母乳育児を勧めるだけでなく、赤ちゃんとの関わり方について適切な情報を提供し支援することで、産後うつの発症を抑えることができるかもしれない」と、研究グループは述べている。

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