年代ごとにLINE、Facebook、Twitter、Instagramの使用頻度と精神的な健康状態を調査
東京都健康長寿医療センター研究所は3月4日、SNSの利用状況と精神的な健康との関連を検討し、全世代を通じてLINE利用者では精神的健康度が高い傾向にあるが、Twitter利用者では精神的健康度が低い傾向にあることを明らかにしたと発表した。この研究は同センターの桜井良太研究員と藤原佳典研究部長らの研究グループによるもの。研究成果は、国際雑誌「PLOS ONE」に掲載されている。
これまでの研究から、他者との交流が人々の健康維持に極めて重要であることが示されてきた。しかし、この他者との交流がSNSといったオンライン上の交流であっても有効であるかについては明らかではなかった。そこで東京都内在住の無作為抽出した2万1,300人を対象に郵送による住民調査を行い、LINE、Facebook、Twitter、Instagramの使用頻度と精神的な健康状態(ウェルビーイング〈精神的な満足感・幸福感:WHO-5質問票で調査〉、悩み・抑うつ傾向〈K6質問票で調査〉、孤立感を測定)の関連を調査した。SNSの利用は「発信」と「閲覧」に分け、それぞれ「週に数回以上利用する」と回答した者を定期利用者とし、精神的健康との関連を検討した。
画像はリリースより
Twitter定期利用の中年者、定期発信の高齢者で孤立感が高くなる傾向
若年者(18~39歳)2,543人、中年者(40~64歳)3,048人、高齢者(65歳~)2,985人、合計8,576人から有効回答が得られ、以下のことが明らかになった。
6割の高齢者がSNSを利用できる機器を保有しており(主にはスマートフォン)、全世代において一番定期利用者が多いSNSはLINEであった。また、若年者ではInstagramの定期閲覧、中年者ではFacebook定期発信、高齢者ではLINE定期利用(発信と閲覧の両者)が良好なウェルビーイングと関連していた。加えて、若年者ではInstagramを定期閲覧、中年者ではLINEを定期発信している者ほど悩み・抑うつ傾向が低い関係が認められた。
一方、両年代においてTwitter定期利用者(発信と閲覧の両者)ほど悩み・抑うつ傾向が強くなる関係が示された。中年者のTwitter定期利用者(発信と閲覧の両者)および高齢者でTwitterを定期発信している者では孤立感を有している割合が高くなる傾向が認められた。さらに、SNS以外のコミュニケーション(対面での会話や電話)が低い者では、全世代を通じて、全ての精神的健康度の指標が悪い傾向が認められた。
精神的な健康状態の維持にはバランスのとれたSNS利用を
今回の結果は、世代間のSNS利用率のばらつきなど等(高齢者層のSNS利用率の低さ)や個別性(SNSの利用目的)を含め、引き続き検証が必要ではあるものの、顔の見えるSNS(LINEやFacebook)や肯定的なイメージのやりとりが生じるSNS(Instagram)であれば、精神的な健康の維持に役立つ可能性を示している。他方、匿名性と自由度の高いSNS(Twitter)であればその逆の危険性を含んでいる可能性を示唆している。
しかし、この研究成果は、一時点の関連性を調べた調査であり、「このSNSを使っていると精神的に健康になる」という因果関係を示したものではなく、SNSの利用頻度別に、利用者の精神的健康度の特徴(SNS利用と精神的健康度の関連性)を示した研究結果であるため、その解釈には注意が必要だ。
「SNS以外のコミュニケーション(対面での会話や電話)頻度も全世代を通じて精神的健康に関連していたことから、バランスのとれたSNS利用が必要である」と、研究グループは述べている。
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・東京都健康長寿医療センター研究所 プレスリリース