■10年以上前から逸脱処理
同社は、2020年4月から21年1月中旬にかけ75品目に上る自主回収を実施しており、富山県と医薬品医療機器総合機構(PMDA)が2月下旬に富山第一工場に立入調査を行っていた。
調査結果から、富山第一工場では品質試験不適合品を承認書と異なる製造方法で適合品となるよう処理し、品質試験等における不適合の結果について適切な措置を実施しなかった事実が判明。
遅くとも2011年頃から逸脱管理責任者が手順書に従い召集する「逸脱会議」と称される会議で出荷試験不適合等の逸脱処理が検討、実施されていた。
そこでは初回試験結果を棄却し、初回試験と同一サンプルを用いた再試験や別のサンプルを用いた試験の適合結果を採用して出荷していた事例、製造指図記録書に記載のない再加工処理を施した上で出荷試験を行い、規格適合結果を得ていたことが明らかになった。
14~16年頃には後発品の需要拡大を背景に逸脱の発生件数、逸脱会議の開催頻度が増え、17年4月以降も不適正な救済措置が継続的に発生していた。
また、09年頃からは、生産品目や包装形態が多く、試験数に対して人的・物的設備が不足し、安定性試験などが実施されておらず、20年2月段階では大量の安定性試験が実施されていない状況にあった。
富山第一工場の医薬品製造管理者は、医薬品の適切な製造管理や品質管理を行うよう管理監督しておらず、これらが薬機法に違反すると判断。富山県は製造業として32日間の業務停止命令を出した。
医薬品製造販売業に対する処分理由についても、同社が製品の適正な製造販売を行うために必要な配慮を怠り、製品の品質管理を適正に行っていなかったと指摘。富山第一工場で承認書の内容と異なる方法で製造された医薬品を製造販売し、医薬品等総括製造販売責任者が必要な品質管理業務を実施しなかったことも含め薬機法の違反事実に当たるとし、24日間の業務停止を命じた。
ただ、製造業の業務停止命令から、▽苦情・返品▽出荷した製品の品質管理▽製品、原料、資材の保管管理――などの業務は除外し、4日以前に市場出荷判定を完了した在庫製品については、行政処分期間中も継続して出荷する。製造販売業の処分についても製品の市販後の安全管理や苦情・返品にかかる業務は除くとしている。
日医工は、20年3月期決算で売上高1900億円と後発品メーカー大手に位置する。1000品目以上の製品を取り扱い、多くの病院・薬局で採用されるなど、同社への業務停止命令が後発品の安定供給に影響を与えることは必至だ。