新生児黄疸で重要な経皮ビリルビン値の経時的管理をより簡便に
横浜国立大学は3月4日、新生児医療に向けた経皮ビリルビン値、SpO2、脈拍同時計測ウェアラブルデバイスを開発し、臨床でその有効性を実証したと発表した。この研究は、同大工学研究院の太田裕貴准教授、稲森剛大学院生、横浜市立大学医学部小児科学の伊藤秀一主任教授、魚住梓助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Science Advances」に掲載されている。
画像はリリースより
新生児における重要なパラメータの一部が脈拍、SpO2、経皮ビリルビン値だ。中でも特に重要な指標の一つが経皮ビリルビン値で、この値が高くなると黄疸を発症する。新生児黄疸は新生児の6割~8割で発症し、重症な場合は脳機能障害等の重篤な後遺症につながる。黄疸を発症しやすい黄色人種の世界的な進出とともに、このような経皮ビリルビン値計測に関する需要は世界的に高まっている。
現在、脈拍、SpO2については有線で計測を行うことができる。また、経皮ビリルビン値については光学式ハンディデバイスでの計測が用いられている。それぞれ単独での計測であり、医療従事者の利用の観点から考えると新生児に対してアクセスしやすく、無線で経時計測が可能なデバイスが必要と考えられる。将来的に、小型でウェアラブル、個人で購入可能な経皮ビリルビン値計測デバイスが実現されれば、新生児の入院日数を短くし、医師・看護師の負担が軽減され、さらには在宅医療における両親の安心や子の安全につなげることができる。
開発した小型ウェアラブルデバイスは光療法中の経皮ビリルビン値の計測が可能
今回研究グループは、フレキシブル基板上に青・緑・赤・赤外LED、フォトダイオード(PD)、プロセッシング回路、Bluetoothモジュールを載せることでデバイスの基板を作製した。この基板は折り畳み可能で、折り畳むことで従来よりも小型化することができたという。加えて、基板の周囲を柔らかいシリコーンゴムを主材として構成し、額との密着性を高めた。さらに、透明な柔らかいレンズをLED上に形成することによって、新生児の皮膚に計測光を効率的に入射することができるように配慮した。額から計測したバイタルサインを、Bluetoothを介してPCおよびスマートデバイスで同時かつ経時的に確認できるようにした。最終的に、縦3cm×横5cm、16グラムの新生児向けのウェアラブルセンサを開発した。
その後、無線を使用し開発したデバイス1台を用いて、商用の黄疸計および新生児用パルスオキシメータと比較し、その有効性を実証した。また、ビリルビン値が高い新生児の一般的な治療法の一つである光療法中の経皮ビリルビン値の計測も同デバイスで可能であることを臨床試験で確認した。
他のバイタルサインも同時検出可能なデバイスの開発へ
今後はさらに心電、呼吸などの他のバイタルサインの計測と連動して、新生児のさまざまなバイタルサインを包括的に計測できるウェアラブルセンサを開発して行く予定だという。「これらをセンシングできる安定的なデバイスを実現することで、在宅で両親が安心して新生児・小児を看護できる環境や在宅医療へのさらなる展開を期待することができる」と、研究グループは述べている。
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・横浜国立大学 プレスリリース