2021年1月以降、英国型変異株の市中感染事例を複数検出
東京医科歯科大学は2月18日、2020年秋以降から同大医学部附属病院に入院または通院歴のあるCOVID-19患者において、さまざまな海外系統株の感染事例が増大していることを確認し、海外系統株の1つは「免疫逃避型変異(E484K変異)」を有していることが判明、複数の市中感染事例を確認したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科ウイルス制御学分野の武内寛明講師・医学部附属病院病院長補佐、難治疾患研究所ゲノム解析室の谷本幸介助教、リサーチコアセンターの田中ゆきえ助教らによる同大入院患者由来SARS-CoV-2ゲノム解析プロジェクトチームと、木村彰方理事・副学長・統合研究機構長および貫井陽子医学附属病院感染制御部・部長らの研究グループによるもの。
画像はリリースより
2020年11月以降、日本では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な症例数の増加局面に直面しており、2020年12月下旬からは、感染性が増大していることが示唆されている英国型変異株(B.1.1.7系統株)、南アフリカ型変異株(B.1.351系統株)およびブラジル型変異株(P.1系統株)の日本国内流入により、市中流行株の変遷に影響をおよぼす可能性が懸念されている。2021年1月以降、B.1.1.7系統株の市中感染事例が、すでに複数検出される事態となりつつあることから、より強固な感染拡大防止対策を講じる必要性に迫られていると考えられる。
日本系統株は減少、免疫逃避型変異を有する海外系統株感染者はいずれも海外渡航歴なし
同大において、2020年11月下旬~12月下旬までに海外からの流入が疑われる3種の英国系統株(B.1.1.4系統、B.1.1.166系統、B.1.1.220系統)の感染事例が確認され、当該感染事例は市中感染であることをすでに第1報として報告している。
今回はその続報として、2020年12月下旬~2021年1月中旬までに入院もしくは通院歴のある患者由来検体11例から、前回の報告事例とは異なるさまざまな海外系統株(B.1.1.130系統、B.1.1.64系統、B.1.346系統、B.1.316系統)の感染事例が確認されたことを報告。一方で、2020年末まで検出されていた日本系統株(B.1.1.214およびB.1.1.284の2系統)の感染事例が減少の一途を辿っていることがわかったという。さらに、今回確認された海外系統株の1つは、「免疫逃避型変異(E484K変異)」を有していることが明らかになった。なお、当該株は3例の患者に認められ、海外渡航歴や相互の接触歴はなかったとしている。
引き続き強固な感染予防対策と、市中感染株推移のモニタリングが重要
2020年末以降の本学由来検体から複数の海外系統株の感染事例が確認され、また2020年3月および7月以降に確認されていた2種類の異なる国内流行株(B.1.1.214およびB.1.1.284の2系統)が減少していることから、現時点において国内流行株が海外系統株に遷移しつつある可能性が考えられる。また「免疫逃避型変異(E484K変異)」を有する海外系統株は、本学で確認されたB.1.316系統株だけでなく、国立感染症研究所からも別系統株(B.1.1.4系統)の感染事例が報告されている。
「これらの海外系統株は感染性の増大が懸念される変異は有していないが、引き続き強固な感染予防対策を継続すると同時に、市中感染株の推移をモニタリングし、ウイルス流行の実態を把握することが重要と考える」と、研究グループは述べている。
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