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新型コロナウイルスに対する中和抗体の取得に成功-慶大ほか

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2021年02月19日 PM12:45

米国では2つの中和抗体製剤がFDAより緊急使用許可を得て、患者に投与されている

慶應義塾大学は2月18日、)に対する中和抗体の取得に成功と発表した。この研究は、同大医学部リウマチ・膠原病内科学教室の竹内勤教授、竹下勝特任助教、同先端医科学研究所遺伝子制御研究部門の佐谷秀行教授、滋賀医科大学疾患制御病態学部門の伊藤靖教授、(理研)生命医科学研究センター分化制御研究チームの福山英啓副チームリーダー、理研生命機能科学研究センタータンパク質機能・構造研究チームの白水美香子チームリーダー、国立感染症研究所免疫部の高橋宜聖部長、森山彩野主任研究官らの共同研究グループによるもの。


画像はリリースより

SARS-Cov-2は、ウイルス表面にあるSpikeタンパク質がヒトの細胞膜上のACE2タンパク質と結合することをきっかけに細胞への侵入を開始することが明らかになっている。この結合を阻害することができれば、ウイルスの侵入を防ぐことができると考えられ、そのような作用のある物質は、治療薬候補として世界中で探索されている。

ウイルスに感染した患者は体内の免疫機構が働き、抗体と呼ばれる防御因子が作られるようになる。抗体は病原体のいろいろな場所に結合することで、ウイルスの活動を阻害し、排除する方向に働く。その中でもウイルスの活性に重要な部位に結合してその機能を阻害し、ウイルスを不活性化する能力を有する抗体は「」と呼ばれる。SARS-CoV-2においては、ウイルス表面のSpikeタンパク質に結合し、ACE2との結合を防ぐことで中和抗体は効果を発揮する。一部の国ではCOVID-19の回復患者の血液から血漿を採取し、感染中の患者に投与するという血漿療法が行われているが、この治療では主に血漿中の中和抗体が治療効果を発揮していると考えられている。

中和抗体を人工的に作り、薬として投与することができれば、COVID-19感染患者の体内に存在するウイルスが細胞に感染するのを防ぐことができると考えられる。実際に米国では、2020年11月に2つの中和抗体製剤が米国食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を得て、患者への投与が開始された。効果に関する研究報告はまだ限られているが、軽症~中等症患者のウイルス量の減少効果と入院患者数を減らしたという報告が出ている。抗体療法は血漿療法と比較して、中和抗体価の高い回復患者からの献血を必要としない点や、輸血に伴う感染症のリスクがないという点で優れていると考えられている。

11種類の候補抗体を特定、COVID-19特異的な治療薬となり得るか動物で効果を確認中

研究グループはまず、COVID-19回復患者の血清中の中和抗体価を測定し、高い中和抗体を持つ患者の血液から、Spikeタンパク質に対する抗体を作っている免疫細胞(B細胞)を採取。次に、その細胞が作っている抗体の遺伝子配列を特定し、その配列を基にして、研究室で人工的に抗体を作製した。そのようにして作製した400種類以上の抗体の中から、Spikeタンパク質とACE2の結合を阻害する効果の高い抗体を選定した。

特に優れた抗体について、国立感染症研究所で確立した手順に従い、感染力のあるSARS-CoV2ウイルスと抗体を反応させた後に細胞に加えることで、抗体が細胞へのウイルス感染をどの程度防げるのかを調べる中和実験を実施。その結果、1μg/mlという低濃度でも細胞へのウイルス感染を完全に防ぐことのできる抗体を11種類特定することに成功した。これらの抗体は治療薬として実用化できる可能性があると考えられ、動物を用いて効果を確認する実験を行っているという。

これらの候補抗体について、COVID-19に特異的な治療薬の候補としてさらなる開発を進めるため、慶應義塾大学医学部と田辺三菱製薬株式会社の間で共同研究契約を締結。国産の治療薬として、早期の実用化を目指すとしている。

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