■田村厚労相「確保に全力」
薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は12日、ファイザーの新型コロナウイルス感染症予防ワクチン「コミナティ筋注」の製造販売承認を了承した。部会で出た意見を添付文書に反映させる手続きを済ませた後、早急に特例承認を行う。新型コロナウイルス感染症ワクチンの承認は国内初となり、今週半ばにも各都道府県で医療従事者を対象とした先行接種の実施を目指す方針だ。
コミナティは、ファイザーと独ビオンテックが共同開発したmRNAワクチン。接種後に体内でmRNAから新型コロナウイルスの蛋白質が作られ、免疫が誘導される仕組みを持つ。現在、世界80を超える国で条件付き承認や緊急使用許可を取得している。
接種対象となったのは高齢者を含む16歳以上の国民。用法・用量は、筋肉内注射で3週間の間隔を空けて2回接種する。
米国など約4万4000人を対象とした国際共同第III相試験では、ワクチンを接種しなかった集団に比べ、発症者を95%減らす予防効果が得られている。
日本人160人を対象とした国内臨床試験では、海外の臨床試験結果と同等以上の中和抗体価の上昇が確認された。安全性についても海外の臨床試験と副反応の頻度が同等で、重篤な有害事象が見られなかったため、部会では「承認しても差し支えない」と結論づけた。
妊婦については、動物実験で特段の懸念は見られておらず、海外でも少数の接種事例があることを踏まえ、予防接種上の有益性が危険性を上回る場合は接種可能とした。
脆弱な高齢者に対しても、ワクチン接種後に因果関係が不明な有害事象や死亡例が報告されているが、医師が個別にリスクベネフィットを評価した上で接種対象者の同意が得られれば接種可能とした。
ただ、ワクチン接種により重篤な過敏症のある人に対しては接種は不適当とした。アナフィラキシー症状や発熱などの副反応が報告されているため、添付文書で医療従事者や接種対象者に注意喚起を行う。
特例承認が適用されるのは、新型コロナウイルス感染症治療薬「ベクルリー」(一般名:レムデシビル)に続き2例目となる。
田村憲久厚生労働相は同日夜、記者団に「ワクチンの承認は新型コロナウイルスとの戦いにおいて大きな意味を持つ」と意義を強調した。承認申請から承認まで2カ月かかったことについては、「欧米に比べて日本での感染者が圧倒的に少なかったため」と説明した。
日本政府は、今年前半までに全国民がワクチン接種を受けられる供給量を確保する方針を打ち出しており、ファイザーとは約1億4400万回分の供給を受ける契約を締結している。
予防接種の開始については、厚生科学審議会ワクチン分科会に諮り、副反応疑いとなる症例基準やワクチン接種の努力義務に関する適用範囲などを確定した後に、接種開始日を決定する流れとなる。
今週半ばには、医療従事者を対象とした先行接種の開始を目指し、4月以降に高齢者や基礎疾患を持つハイリスクな人、一般の人たちへの接種を行うとしている。
田村氏は「まずは医療従事者に順調に接種いただくことが一番大事。ワクチンを確保しないといけないので、全力を尽くしていきたい」と語った。