■データねつ造や二重帳簿も
小林化工が製造販売する抗真菌剤「イトラコナゾール錠」に睡眠導入剤が混入して健康被害が発生した事案について、福井県は9日、同社に対して医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき、過去最長となる116日間の業務停止命令を出した。承認書とは異なる手順書に沿った製造や立入検査用の二重帳簿作成、品質試験結果のねつ造などの製造実態を経営陣が把握しつつ、長期間にわたって黙認してきた事実を重く見た厳しい処分となった。
同社が製造販売したイトラコナゾール錠をめぐっては、服用した患者344人のうち、1日時点で2人の死亡例を含む221人の健康被害が報告されている。
厚生労働省と県、医薬品医療機器総合機構(PMDA)は2020年12月に同社工場の立ち入り調査を実施した。
調査結果からは、本来2人体制で実施するはずの原料の取り出し作業を人員不足により1人で行い、本来使用すべき原料と睡眠導入剤の原薬を取り違える製造実態が明らかになった。
さらに、承認された手順書に反する製造実態に合わせた手順書の作成が常態化しており、取り違えた原薬を製造工程の途中で継ぎ足していた。立入検査対策として、虚偽の記録(二重帳簿)も作成していたことが分かった。品質試験結果のねつ造も行っており、異常データの検出に対する原因究明を実施していなかった。
承認外手順書による製造は少なくとも2005年頃から行われ、経営陣も同時期から把握していた。品質試験結果のねつ造は40年以上前から行われていた。
他の品目でも同様の製造実態が確認されており、矢地と清間の2工場で製造された約500品目のうち、二重帳簿が作成されていたものが7割、承認外手順書に従って製造されたものが3割を占めた。
福井県は、この製造実態が薬機法の複数の規定に反すると判断。県の基準に沿って、同社の矢地工場に116日間、清間工場に60日間の業務停止命令を出した。経営陣が法令に反する実態を把握しながら改善策を取らなかったことが最大の問題とし、16年に旧化学及血清療法研究所に出した110日間を上回り、過去最長となる厳しい処分となった。
ただ、医療上の必要性が高い品目については、他社の安定供給に支障がなくなるまでの間に限り業務停止命令から除外され、除外品目は県が検討している。
薬機法や関連法令の遵守、製造・販売に関する体制見直しなどの業務改善命令も出しており、改善されない場合は、業務停止期間の終了後も出荷再開を認めないとした。