血清リン濃度管理目標値、介入研究に基づいたエビデンスはなかった
大阪大学は2月9日、透析患者のリンの管理目標値を厳格にコントロールすることで、冠動脈石灰化を抑制することを初めて証明したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の猪阪善隆教授(腎臓内科学)、富山憲幸教授(放射線医学)、名古屋市立大学大学院医学研究科腎臓内科学分野の濱野高行教授、京都府立医科大学生物統計学教室の手良向聡教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「Journal of American Society of Nephrology」に掲載されている。
画像はリリースより
日本には、約34万5,000人(2019年度末)の透析患者がいるとされ、透析患者は年々増加しているとされている。透析患者は、心血管病による死亡のリスクが高く、観察研究ではリン吸着薬を服用することで死亡リスクが減少することが知られている。
日本のCKD-MBDガイドラインでは、血清リン濃度の管理目標値として3.5~6.0mg/dlに保つことが推奨されており、この管理目標値は健常人の血清リン濃度の基準値(2.5~4.5mg/dl)に比べて高めとなっている。一方、海外のKDIGOのCKD-MBDガイドラインでは、血清リン濃度を正常値に保つことが推奨されている。ところが、これらのガイドラインで推奨されている血清リン濃度の管理目標値は観察研究に基づくものであり、介入研究に基づいたエビデンスはなかった。
スクロオキシ水酸化鉄/炭酸ランタン、冠動脈石灰化に及ぼす影響は?
研究グループは、慢性維持透析患者にリン吸着剤(スクロオキシ水酸化鉄または炭酸ランタン)を投与した際の冠動脈石灰化に及ぼす影響を調べるために、両薬剤と血清リン濃度値(標準リンコントロール群[5.0-6.0mg/dl]、厳格リンコントロール群[3.5-4.5mg/dl])を治療目標としたランダム化比較試験(EPISODE研究)を行った。
血液透析患者の冠動脈石灰化スコアを心電図同期CTにより評価し、冠動脈石灰化スコアが30以上の透析患者を対象として、12か月間スクロオキシ水酸化鉄または炭酸ランタンを投与し、治療目標値を標準リンコントロール群[5.0-6.0mg/dl]、厳格リンコントロール群[3.5-4.5mg/dl]にランダム化し、12か月後の冠動脈石灰化スコアの変化率を検討した。
いずれの群でも、血清リン濃度「低」で冠動脈石灰化スコア変化量「低」の関係
検討の結果、スクロオキシ水酸化鉄群と炭酸ランタン群で冠動脈石灰化スコアの変化率に有意差はみられなかった。また、標準リンコントロールに比べて厳格リンコントロール群で有意に冠動脈石灰化スコア変化率が抑制されることがわかった。さらに、いずれの群でも、血清リン濃度が低下するほど、冠動脈石灰化スコア変化量が低下する関係にあることがわかったという。
今回の研究成果により、血液透析患者のリン濃度を厳格にコントロールすることが透析患者の冠動脈石灰化を抑制することがわかり、透析患者の生命予後を改善させることが期待できる、と研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU