2020年の自殺率を過去データと比較、性・年齢・職業別で分析
東京大学は2月8日、日本における新型コロナウイルス感染症のパンデミック下での自殺率の変化について調査した結果を発表した。これは、同大大学院医学系研究科国際保健学専攻国際保健政策学分野の上田ピーター客員研究員、サイラスガズナビ客員研究員、坂元晴香特任研究員らと、国立国際医療研究センター国際感染症センターの石金正裕氏の研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」にオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
新型コロナウイルス対策として行われるさまざまな政策が自殺者数増加につながる可能性が指摘されている。高所得国のデータでは、パンデミック初期の数か月間は自殺率の増加は見られなかったが、2010年1月~9月までの日本の自殺率のデータを用いた最近の分析では、2020年7月、8月、9月には女性で自殺率の増加が見られ、男性では増加が見られなかったと報告されていた。
今回の研究では、厚生労働省が所管する2011年~2020年11月までの自殺で死亡した人の月別全国データ「自殺の統計:地域における自殺の基礎資料」を利用し、日本での自殺率の変化について、性、年齢層、職業別に分析を行った。分析はパンデミックと自殺率との関連について2つの異なる手法を用いて評価した。まず一次分析として2016年~2020年までのデータを用いて差分の差分法分析を行った。
2020年の自殺率は2016~2019年より、男性で10月と11月、女性で7月~11月に増加
2011年1月から2020年11月にかけて日本国内で自殺した人は、男性6万1,366人(68.1%)、女性2万8,682人(31.9%)、合計9万48人であった。2016年~2019年と2020年の自殺率は、男性の全年齢層を対象とした分析では4月~9月は統計的に有意な差はなかった。しかし10月、11月では2020年に有意に増加が見られた。また、女性の全年齢層を対象とした分析では7〜11月において、2020年に増加が見られた。
また、二次分析では2011年以降の自殺率の傾向を踏まえて予想される自殺率と、実際に観測された自殺率との比較を行った。その結果、男性では30歳未満の層でその比率が最大であった。具体的には、7月の1.34(95%CI,1.14~1.54)から9月の1.68(95%CI,1.46~1.89)までの範囲であり、2019年までのトレンドから推定された自殺率と2020年に実際観察された自殺率との間に大きな開きが見られた。
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