アクテムラと標準的な医療措置併用時の有効性と安全性評価のP3試験
中外製薬株式会社は2月9日、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体「アクテムラ(R)点滴静注用80mg、同200mg、同400mg」(一般名:トシリズマブ(遺伝子組換え))について、新型コロナウイルス感染症に伴う肺炎(以下、COVID-19肺炎)を対象とした国内第3相臨床試験であるJ-COVACTA試験の結果を発表した。今後、同試験のさらなる詳細な解析を予定しており、試験成績は医学系学会で発表予定だ。
アクテムラは、炎症性サイトカインの一種であるIL-6の作用を阻害する働きを持つ、同社創製の国産初の抗体医薬品。日本では、2005年6月に販売を開始した。点滴静注製剤では関節リウマチをはじめ6つの適応症(キャッスルマン病、関節リウマチ、全身型若年性特発性関節炎(sJIA)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎(pJIA)、腫瘍特異的T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群、成人スチル病)、皮下注製剤では3つの適応症(関節リウマチ、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎)で承認を取得。現在、世界110か国以上で承認されている。
J-COVACTA試験は、重症COVID-19肺炎の入院患者を対象に、アクテムラと標準的な医療措置併用時の有効性と安全性を評価する単群国内第3相臨床試験。主要評価項目は、投与開始28日時点の7カテゴリ順序尺度を用いて評価した臨床状態で、順序尺度は1(退院または退院待機状態)から7(死亡)の範囲で、ECMOや人工呼吸器、および酸素投与の必要性等に基づき定められる。主な副次評価項目は、臨床状態の改善までの期間および退院または退院準備状態までの期間など。同試験は、2020年4月8日に治験届を提出し、同年5~10月までに患者計49人が登録された。
投与開始後28日時点、アクテムラ治療48例のうち35例(72.9%)が退院または退院待機状態
試験の結果、アクテムラ投与開始後28日時点において、同試験に参加しアクテムラ治療を受けた48例のうち、35例(72.9%)が退院または退院待機状態に至り、5例(10.4%)が死亡した。
また、投与開始後28日時点の7カテゴリ順序尺度が投与開始時と比較して1段階以上改善した患者は39例(81.3%)、1段階以上悪化した患者は6例(12.5%)だった。
アクテムラの安全性は、これまでに認められている安全性プロファイルと同様で、新たな安全性上の所見は示されなかったとしている。
アクテムラのCOVID-19肺炎に対する承認申請、今後当局と協議予定
現在、アクテムラはいずれの国においてもCOVID-19肺炎に対し承認されていない。海外では、ロシュ社が重症COVID-19肺炎の入院患者を対象としたレムデシビル併用の第3相臨床試験であるREMDACTA試験を含む複数の臨床試験を実施中だ。これまで、重症COVID-19肺炎の入院患者を対象とした第3相臨床試験であるCOVACTA試験の結果を2020年7月に、COVID-19肺炎の入院患者を対象とした第3相臨床試験であるEMPACTA試験の結果を同年9月に発表している。
同試験およびREMDACTA試験をはじめとする海外試験の結果を踏まえ、今後アクテムラのCOVID-19肺炎に対する承認申請について当局と協議する予定だとしている。
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・中外製薬株式会社 ニュースリリース