抜歯の20%以上を占める「根尖性歯周炎」について詳しく研究
東北大学は2月5日、根尖性歯周炎による顎骨破壊を抑制する仕組みを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科齋藤正寛教授(歯科保存学分野)、北浦英樹准教授(顎口腔矯正学分野)、新潟大学大学院医歯学総合研究科の野杁由一郎教授(う蝕学分野)および神奈川歯科大学の半田慶介教授(口腔生化学分野)の共同研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
画像はリリースより
歯科の2大疾患はう蝕と歯周病であり、「食する」ための咀嚼機能に重大な障害を引き起こす。なかでも、むし歯で引き起こされる根尖性歯周炎は、口腔内からの細菌感染を原因に顎骨破壊を引き起こすため、感染源となる歯の内部の清掃あるいは顎骨破壊された部分を摘出する手術で治療する。しかし、これらが奏功しない場合は抜歯となる。根尖性歯周炎を原因とする抜歯は全体の21%を占めており、関連する治療費を含めると、年間約220億円の医療費が費やされている。
CXCL9の阻害薬であるCXCR3拮抗薬の投与で、根尖性歯周炎による顎骨破壊を抑制
研究グループは今回、根尖性歯周炎モデル動物を用いて、ケモカインであるCXCL9がマクロファージと呼ばれる免疫細胞を活性化し、骨を破壊する破骨細胞を活性化する炎症性サイトカインと呼ばれるタンパク質を分泌することで、顎骨の破壊を促進していることを発見した。また、根尖性歯周炎モデル動物にCXCR3拮抗薬と呼ばれるCXCL9の効果を阻害する薬剤を投与したところ、薬を投与していないモデル動物と比較して、顎骨破壊が抑制されることを明らかにした。
今回の研究成果は、ケモカインの効果を抑制する抗炎症治療の技術を用いて顎骨破壊を抑制することで、根尖性歯周炎による抜歯を回避する新規治療技術として実用化されるばかりでなく、骨破壊を伴う疾患を扱う整形外科領域への応用も期待できる、と研究グループは述べている。
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・東北大学 プレスリリース