バイオ医薬品は世界の医薬品市場全体に占める割合が上昇傾向にあり、19年時点で売上額上位100品目のうち53品目を占める。国内で販売されるバイオ医薬品も増加傾向にある一方、約9割が海外で製造されており、海外製造拠点への依存度が高いのが課題となっている。
その中でも、欧米諸国や中国などではバイオ分野の戦略を策定し、研究開発への支出を増加させる一方、日本発のバイオ医薬品、診断薬の競争力は高くなく、民間の研究開発投資額も伸び悩んでいる。
こうした状況を受け、経産省は、バイオ分野の産業競争力強化や新しい産業の創出を目指し、検討会の設置を決めた。今後、バイオ医薬品や再生医療等製品の実用化に必要な環境整備などを議論し、技術戦略として取りまとめる。
具体的な検討課題について「白紙状態」としているが、今夏の22年度予算概算要求までに一定の方向性を示した上で、技術戦略の内容を同年度の施策に反映させる。
主な施策は、▽バイオ医薬品および再生医療等製品のCMO/CDMOの競争力強化▽重点的に対応すべき研究課題――などとなっている。
バイオ医薬品をめぐってはCMO/CDMOの外部リソースを積極的に活用する動きが世界的に見られており、現在世界で5000億円の市場規模に拡大。今後10年間で年率8%程度の成長を見込むとの試算もある。
海外ではスイス・ロンザや韓国サムスンバイオロジクスなどが世界的なバイオ医薬品CMOに成長し、日本では富士フイルムがM&Aを通じて事業拡大を進めている。
今後、バイオ医薬品、遺伝子・細胞治療製品に関する国内の製造基盤を確保するため、CMO/CDMOに対する具体的な支援策を検討する方針だ。
新規製品の上市が期待される再生医療等製品の国内製造基盤も強化する。再生医療等製品の国内CMO/CDMOは多く存在していないことから、バイオ医薬品のCMO/CDMOが遺伝子・細胞治療製品分野に展開することを促す研究開発プロジェクトを構築するほか、臨床試験で用いる治験薬スケールのプロセス開発・製造に迅速に対応可能なCDMOを育成する。
一方、重点的に対応すべき研究課題では、ライフサイエンス技術戦略検討会を立ち上げるほか、化学産業のバイオテクノロジーを指すホワイトバイオ分野で、化学プロセスでは製造が難しい高付加価値な新素材を生み出す「スマートセル」の開発を進める。