今回の承認申請に当たって、AZは英国やブラジルなどで実施された臨床試験の中間解析結果を中心に、医薬品医療機器総合機構(PMDA)にデータを提出した。国内では、昨年8月末から256人の被験者を対象に第I/II相試験が実施され、全ての被験者に接種を終えている。現在、主要な臨床試験データを準備中で、その他品質に関わるデータなどを含め、3月には提出する予定だ。
同ワクチンについては、日本政府がAZから1億2000万回分の供給を受ける契約を締結しており、そのうち3000万回分については3月までに供給する予定となっていた。少なくとも6カ月間は、2~8℃の冷蔵保存が可能なため、超低温保管する必要がないメリットがあるとされる。
■ワクチン製剤化で契約-第一三共、KMバイオと
AZは、同ワクチンについて国内製造する方針を示しており、同日には国内供給に向け、第一三共、KMバイオロジクスと製剤化に関する業務委受託契約を締結したと発表した。
第一三共は、同ワクチンの国内製造・供給スキームの一部を担うため、AZから提供される原液を用いて国内でのバイアル充填や包装などの製剤化を行う。製剤化については、埼玉県にある製造子会社「第一三共バイオテック」が、国の事業で整備した設備を活用して実施する。
KMバイオロジクスも、原液のバイアル充填や包装などについて、熊本県の合志事業所の設備を活用して製剤化する。
さらにAZはMeiji Seika ファルマと、同ワクチンの国内供給に向けた保管、配送、安全性情報の収集などに関する業務委受託契約も締結したと発表した。
Meijiは、国内における同ワクチンの保管と配送を担う。流通では厚生労働省が構築した「ワクチン接種円滑化システム」を使用し、供給から分配、在庫管理を含む流通管理を行う。
同ワクチンに関する情報提供やファーマコビジランスに関わる安全性情報の収集についても、AZが構築するウェブツールを活用してオンラインで行う。オンラインアクセスができない場合は、必要に応じてMeijiのMRが情報収集を行う。
AZ研究開発本部パンデミックワクチンプロジェクト日本リードの田中倫夫氏は昨年11月の会見で、同ワクチンについて「安全保障の観点から国内製造にこだわっている」と強調し、承認取得後の日本人への接種に当たっては「安全に使用できる体制を作ることが最も大事」との考えを示していた。