後期高齢心疾患患者が慢性腎臓病を合併すると心血管病が重症化しやすい
東北大学は2月4日、外来通院型の包括的な心臓リハビリテーションプログラムに参加することや身体活動量を高く保つことが75歳以上の後期高齢心疾患患者の腎機能維持に寄与する可能性があることを発表した。これは、同大大学院医学系研究科内部障害学分野の大学院生笹本雄一朗、上月正博教授らのグループによるもの。研究成果は、「Circulation Journal」電子版に掲載されている。
画像はリリースより
日本における75歳以上の後期高齢者の人口割合が、今後さらに拡大していくと予測されている。後期高齢心疾患患者が慢性腎臓病を合併すると心血管病が重症化しやすく、特に、心不全が悪化し入退院を繰り返すことが問題となっている。そのため、心臓と腎臓の双方の機能低下が引き起こす悪循環に対して、早期から治療介入を行なう必要があることが重要な課題となっている。
近年、外来の心臓リハビリテーションプログラムに参加した心疾患患者において、自転車エルゴメーター等を用いた運動療法を実施することで、心臓機能のみならず腎機能が維持・改善することが報告された。さらに、急性心筋梗塞患者において、退院後の身体活動量を高く保つと腎機能の低下が抑制されることが報告されており、運動療法や身体活動量を高めることの腎機能に対する保護効果が注目されている。しかし、これまでに75歳以上の後期高齢心疾患患者に着目した検証はなく、運動療法や身体活動量に関連する効果は不明だった。
外来心臓リハビリ実施で腎機能維持、心不全増悪に伴う再入院が減少
研究グループは、心疾患で入院し、入院中の心臓リハビリテーションを実施した75歳以上の後期高齢心疾患患者を対象に調査を行った。外来心臓リハビリテーション(監視型運動療法、在宅運動指導、栄養指導、疾病管理指導)に参加したグループ(介入群)と参加しなかったグループ(コントロール群)に分け、退院時と退院後3か月時の心臓機能および腎機能を含む血液・尿検査、身体・精神機能検査を行った。
退院後3か月間の身体活動量を評価し、外来心臓リハビリテーションの効果を検証した。また、腎機能の指標には食事や筋肉量などの影響を受けにくい血清のシスタチンCから算出した推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate;eGFR)を評価し、身体活動量の指標には3軸加速度計内蔵の歩数計により記録した一日歩数を評価した。
その結果、介入群では身体活動量が高く保たれ、腎機能は維持されていることがわかった。また、心不全増悪に伴う再入院が少なくなる結果となった。
今回の研究で75歳以上の後期高齢心疾患患者が外来心臓リハビリテーションに参加することや身体活動量を高く保つことが腎機能の維持に寄与する可能性を示した。「腎機能を保護するために外来心臓リハビリテーションが臨床的に有効な1つの治療介入となりえ、心不全による再入院の予防や治療経過の改善に寄与する可能性があると期待される」と、研究グループは述べている。
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