アレルギーが良くなっている子ども17人と、鶏卵アレルギー持続の子ども26人を調査
国立成育医療研究センターは2月3日、6歳時の鶏卵アレルギー(食物経口負荷試験(OFC)で判定)に鶏卵長期完全除去の影響に関する調査結果を発表した。この研究は、同大研究センターのアレルギーセンター大矢幸弘センター長、山本貴和子、宮城俊雅の研究グループによるもの。研究成果は、小児科学の国際英文雑誌「Frontiers in Pediatrics」に掲載されている。
画像はリリースより
3歳までの子どもにおける食物アレルギーでは、その原因として鶏卵アレルギーが最も多いことが同センターの報告した全国調査で明らかになっている。海外の報告によると、卵白特異的IgE抗体のピークが50kU/L以上の子どもでは、8歳時に鶏卵アレルギーが改善していたのが11%で、すべての子どもの鶏卵アレルギーが年齢とともに改善するわけではないことが明らかになっている。また、鶏卵のアレルギー検査が陽性という理由だけで鶏卵摂取を完全除去されている子どもが57%いたことが報告されている。
研究グループは今回、鶏卵を長期に完全除去した場合、鶏卵アレルギーの寛解に影響が出るのではないかと考え、調査を実施した。
今回の研究では、2013年11月~2019年7月までに、同センターのアレルギーセンターで食物経口負荷試験(OFC)を実施した6歳の子どもで、2歳までにアレルギー検査のデータがある子ども(他院のデータ含め)の電子カルテデータを用いて、過去にさかのぼって情報を集めて後方視的に調査。OFCの結果から、加熱鶏卵アレルギーが良くなっている子ども17人と、OFCで少量の鶏卵に反応した鶏卵アレルギーが持続している子ども26人を調査した。
6歳までの長期間鶏卵完全除去による鶏卵アレルギー持続のリスクは14.5倍
調査の結果、6歳で完全除去を継続していた子どもは13人で、鶏卵アレルギーが良くなっている子どもは1人だった。完全除去で待っていれば自然にすべての子どもの鶏卵アレルギーがよくなるわけではなかったとしている。
2歳までのオボムコイド(卵白中の耐熱性が高いタンパク質)IgE抗体価で調整した場合であっても、6歳までの長期間の鶏卵完全除去により鶏卵アレルギーが持続するリスクは14.5倍と有意に上昇することが明らかになった。
保護者の自己判断で鶏卵を子どもに食べさせるとアナフィラキシーのリスク高
皮ふや血液のアレルギー検査陽性だけで、食物アレルギーを正しく診断することはできない。そのため、検査値陽性だけを理由に完全除去するのは推奨されず、部分解除や経口免疫療法を行って完全除去しない方が、鶏卵アレルギーの予後が良いと考えられる、としている。
ただし、保護者の自己判断で鶏卵を子どもに食べさせるとアナフィラキシーなどを生じるリスクが高くなる。食物経口負荷試験などによる医師の適切な指示の下で必要最小限の除去を行い、保護者の自己判断により自宅で食べさせないよう注意が必要だと述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース