心房細動中の心拍数は個人差が大きく、頻脈コントロールに難渋する症例も
広島大学は2月2日、心房細動における心拍数がGJA1遺伝子多型変異(Cアレル)を有する症例で速いことを確認し、GJA1遺伝子多型を心房細動中の心拍数にかかわる新たな因子として発見したと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科循環器内科の岡村祥央大学院生(博士課程・クリニカルスタッフ)、中野由紀子教授、同消化器代謝内科の越智秀典客員教授、茶山一彰教授らの研究グループによるもの。研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
心房細動は頻脈の原因となる最も頻度の多い一般的な不整脈であり、心房細動により脳梗塞や心不全を引き起こす危険性が増加することが知られている。レートコントロール療法は、頻脈性心房細動に対する治療法として最も一般的な治療法であり、適切なレートコントロール療法により心不全の増悪を予防することができる。特に、心不全を合併した心房細動患者において、心拍数100拍/分以上の頻脈は死亡率の上昇と関連することが報告されており、レートコントロール療法によりその死亡率を改善することが期待される。
しかし、心房細動中の心拍数は個人差が大きく、レートコントロール療法に使用されるβ遮断薬やカルシウム拮抗薬など複数の薬剤を使用しているにもかかわらず、頻脈のコントロールに難渋する症例も散見される。心房細動中の心拍数の規定因子は房室結節の伝導特性や自律神経系の関与が報告されているが、その他の因子については解明されていない。
GJA1遺伝子多型変異のCアレルを有する症例、24時間総心拍数が多い
今回、研究グループは、心房細動の心拍数を規定する遺伝的要因を探るため、ゲノム関連解析で報告された心房細動の発症との関連を認めた21の遺伝子多型に着目。広島大学病院で持続性心房細動のカテーテル治療を行った311人のホルター心電図による24時間心拍数と心房細動関連遺伝子である21の遺伝子多型を評価した。
その結果、心房細動における心拍数が21の遺伝子のGJA1遺伝子多型(rs1015451)変異であるCアレルを有する症例で、24時間総心拍数が多いことがわかった(TT(ワイルド(正常)):11万643拍/日、TC(ヘテロ):11万6,350拍/日、CC(ホモ(異常がある)):122,163拍/日)。追加で行われた心房細動を有する患者146人においても同様に、Cアレルを有する症例で24時間総心拍数が多いことが確認された(TT:11万3,139拍/日、TC:11万9,014拍/日、CC:12万8,489拍/日)。
GJA1遺伝子多型が心房細動中の心拍数に関与するということが新たに判明したことは、今回の研究での大きな発見だとしている。
レートコントロール療法の薬剤耐性予測などにつながる可能性
GJA1遺伝子は、ギャップジャンクションという細胞間を電気的に連結するチャネルタンパク質をコードしている。
GJA1遺伝子多型が心房細動の心拍数に関与しているという発見は、今後頻脈性心房細動に対するレートコントロール療法の薬剤耐性の予測や新たな治療法につながる可能性があると、研究グループは述べている。
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・広島大学 研究成果