重症患者の管理に深く関わっていることや、看護師と連携した持参薬鑑別、動画を活用した服薬指導など工夫を凝らして業務に取り組んでいることが示された。患者が急増している第3波への対処を懸念する声もあった。
神戸市立医療センター中央市民病院薬剤部の田村亮氏は、重症患者に対する薬剤師の役割を紹介した。同院では、患者の受け入れ開始以降も個人防護具等の対策が必要なレッドゾーン内に立ち入り、薬剤供給や医師への処方設計提案などの業務を継続。
ICU内の重症患者に対する薬学的ケアとして、重度の呼吸不全になる急性呼吸窮迫症候群に進展しないように輸液や注射薬の希釈液量を可能な限り抑えるなど、体水分管理に関わった。また、体水分制限によって生じるナトリウムやカリウム値の異常などにも対処することが多かったという。
一方、患者に関わる医療者を最小限に抑えるため、病棟での薬剤師業務に制限をかける病院は少なくない。昨年、コロナ専門病院に指定された大阪市立十三市民病院薬剤部の土井克彦氏は「2次感染予防と個人防護具確保の観点から、他職種と同様に薬剤師も服薬指導などベッドサイドでの業務を行えなくなった」と報告した。
薬剤師の持参薬鑑別業務は、看護師が薬剤やお薬手帳、薬袋、薬剤情報提供書をビニール袋に入れて清拭したものをレッドゾーン外で受け取り、お薬手帳のスキャン画像と合わせて袋越しに行っている。土井氏は「今後、患者への服薬指導をどのように行うかが課題」と語った。
服薬指導の工夫事例として、日本赤十字社和歌山医療センター薬剤部の阪口勝彦氏は、和歌山県の病院を対象に実施したアンケート結果を紹介。「感染症病棟で薬剤師の対面指導が禁止となったため、吸入薬の吸入指導は動画サイトを準備し、QRコードを読み取れば動画を視聴できるように工夫した病院があった」と話した。
奈良県立医科大学病院薬剤部の谷田彩氏は「当初から一番危惧しているのは、薬剤部内で感染者が発生し、濃厚接触者が多数発生することで薬剤部の業務が停滞すること」と病院の機能維持の課題を指摘した。
対策として、感染防止策の徹底に加えて、感染者発生時に薬剤部内で優先する業務、人員の割り当てなどを具体化した事業継続計画(BCP)を策定したという。担当者以外にも業務可能な薬剤師を増やすため研修に取り組んでいるが、通常業務を抱えながら担当者と同じレベルに達することは容易ではない。
その解決に向けて、谷田氏は、「現在、紙の業務マニュアルでは理解しにくい部分を動画で補完できるよう業務の動画制作に取り組んでいる」と語った。
患者が急増している第3波への対処を懸念する声も聞かれた。堺市立総合医療センター薬剤・技術局の石坂敏彦氏は、「堺市でも死亡や重症、中等症から重症化への増加、医療施設でのクラスター増加などによって、入院ベッドがひっ迫している。第2波とは明らかに状況が違う」と指摘。
「患者の受け入れや転院など、地域における役割分担が重要である。これができないと医療が崩壊する。他人事ではない話し合いが必要」とメッセージを投げかけた。
京都市立病院薬剤科の森田眞由氏も、「これまでは専門性の高い医療者が治療に関わっていたが、現在は感染症科以外の医師や、他病棟からのヘルプスタッフが混在しており、感染管理が不十分になることが懸念される」とし、「薬剤師のマンパワーも不足している」と訴えた。