東京医歯大入院患者由来SARS-CoV-2ゲノム解析プロジェクトチームによる解析
東京医科歯科大学は1月29日、同大学医学部附属病院に入院のCOVID-19患者から市中流行株として確認されていない英国系統3種の感染事例を確認したと発表した。これは、同大学大学院医歯学総合研究科ウイルス制御学分野の武内寛明講師・医学部附属病院病院長補佐、難治疾患研究所ゲノム解析室の谷本幸介助教、リサーチコアセンターの田中ゆきえ助教らによる同大入院患者由来SARS-CoV-2ゲノム解析プロジェクトチームが、木村彰方理事・副学長・統合研究機構長および貫井陽子医学附属病院感染制御部・部長との共同解析として行ったもの。
画像はリリースより
2020年11月以降、日本では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な症例増加に直面している。2020年12月からは、感染性が増していることが示唆されている英国SARS-CoV-2新規変異株(B.1.1.7系統株)および南アフリカ新規変異株(B.1.351系統株)の日本国内流入による市中流行株の変遷に影響をおよぼす可能性が懸念されることから、2020年12月末から水際対策が強化されている。しかしながら、2021年1月に、B.1.1.7系統株の市中感染事例が確認されただけでなく、前述2種類の変異株と共通変異部位を有する新たな変異株(B.1.1.248系統株)が、ブラジルからの渡航者から検出されている。これらのことから、さまざまな海外由来SARS-CoV-2系統株の日本国内流入阻止が難しい状況に直面していると考えられる。
入院歴のある患者が、海外のSARS-CoV-2系統株に感染していた
今回、プロジェクトチームは、2020年7月以降に同大医学部附属病院に入院歴のあるCOVID-19患者から得られた鼻咽頭スワブ検体に含まれるSARS-CoV-2の全長ゲノム配列を解析し、(1)ウイルス学的特徴、(2)COVID-19疫学データ、(3)臨床的特徴を紐付けすることによりCOVID-19病態解明および公衆衛生上の意思決定への貢献を目指すことを目的として解析を進めてきた。
その結果、2020年11月下旬から12月下旬までに同病院に入院歴のある患者由来検体から、現時点における国内流行株(B.1.1.214系統)や感染性の増加が懸念されているSARS-CoV-2新規変異株(英国変異株:B.1.1.7系統、南アフリカ変異株:B.1.351系統、ブラジル渡航者由来変異株:B.1.1.248系統)とは異なる3種の海外系統株(B.1.1.4系統、B.1.1.166系統、B.1.1.220系統)の感染事例が確認された。
3種類の英国系統株を確認、いずれも海外渡航歴なし
これらは英国系統株に分類され、日本では今冬に空港検疫症例としてすでに確認されていたが、市中感染事例は不明な状況だった。今回、上記3種の英国系統株が検出された患者の疫学情報を確認したところ、いずれも海外渡航歴がないことから、当該感染事例は市中感染によるものと考えられた。
英国系統株3種の市中感染事例が新たに確認されたことから、現時点の国内流行株の変遷に影響をおよぼす可能性が考えられるという。研究グループは、「当該英国系統株に感染した患者2人が重症化していることから臨床症状への影響も考えられるが、感染性や病原性、検査方法やワクチンへの影響等については、現時点においては判断が難しく、引き続き解析および調査が必要となる」と、述べている。
▼関連リンク
・東京医科歯科大学 プレスリリース