ERK活性化がん細胞を特異的に細胞死誘導するACA-28
近畿大学は1月28日、がん細胞のみに細胞死(アポトーシス)を誘導する化合物「ACA-28」のメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大薬学部創薬科学科の杉浦麗子教授らの研究グループが、兵庫医療大学薬学部と共同で行ったもの。研究成果は、「Genes to Cells」に掲載されている。
画像はリリースより
がん細胞では、増殖を司るERK MAPキナーゼ(以下、ERK)の働きが活発になっていることから、ERKの働きを阻害する抗がん剤の開発が精力的に行われてきた。研究グループは、独自の創薬手法により化合物「ACA-28」を取得。ACA-28が悪性黒色腫(メラノーマ)などのERKが活性化しているがん細胞を特異的に細胞死に誘導することから、その作用を探っていた。
今回、研究グループは、がん細胞においてERKの活発な働きに拮抗するために、ERKの働きにブレーキをかける酵素DUSPの量が増えることに着目。ACA-28とDUSPの関係を調べた。
DUSP高発現がん細胞の増殖阻害、正常細胞への影響は限定的
研究の結果、ACA-28は、DUSPのタンパク質分解を介して、DUSPのタンパク質量を減少させていることが判明した。
ACA-28は、DUSPが高発現しているがん細胞の増殖を阻害するのに対して、正常細胞に対する影響は限定的だった。一方、DUSP遺伝子をノックダウンし、DUSPタンパク質発現を減少させることでも、ACA-28同様に、がん細胞選択的な増殖阻害が起こったという。
現在までの抗がん剤開発は、がん細胞で活発になっている「アクセル」の働きを止める薬剤の開発が主流だ。今回の発見は、がん細胞の「ブレーキ」であるDUSPの発現量を制御することにより、副作用の少ない新たながん治療戦略につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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