非競争的な協業の枠組みを通じて、アカデミアによる医療課題の解決や製薬企業による革新的新薬創出につなげる。
プロジェクトに参画する製薬企業は、旭化成ファーマ、アステラス製薬、エーザイ、小野薬品、田辺三菱製薬、第一三共、日本新薬の7社。
アカデミアからはNCBNのほか、国立国際医療研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立長寿医療研究センター、国立循環器病研究センターも参画する。
日本医療研究開発機構(AMED)の産学官共同臨床情報利活用創薬プロジェクトに応募し、採択された。研究開発代表者は、国際医療研究センターのバイオバンクアドバイザーを務める後藤雄一氏。
企業の創薬活動をめぐっては、臨床情報と紐づけられた患者由来の試料から得られたオミックスデータをもとに、病態を緻密に体系的・網羅的に解析することで創薬に結びつける動きが盛んになっている。
NCBNは国立高度専門医療研究センターのバイオバンク試料と、精緻な診療を介して前向きに取得した試料を保有しており、高度な測定手法を用いて遺伝情報やmRNA、蛋白質、代謝物などを網羅的・多層的に解析したオミックスデータを取得。これと医療情報を紐づけることで疾患別情報統合データベースを非競争的に構築する。
データベース構築後、各機関は注目する疾患や興味深い分子に着目し、独自に解析を行う。アカデミアにとっては、新たな疾患分類や早期診断方法の提案、新たな治療ガイドラインの策定などを実現でき、製薬企業は層別化された患者層に対する標的分子の同定から、疾患バイオマーカーに基づく革新的新薬創出につなげる。
中長期的には最先端の試料解析方法やビッグデータ解析、人工知能の活用など異分野の手法も融合させ、データベースの2次利用を推進する。外部データとの連携も加速させ、予防・先制医療ソリューションの環境整備を進める。
日本では政府主導による全ゲノム解析等実行計画の検討が進められ、ゲノム情報を活用した創薬が期待されている。欧米では政府管理によるデータベースがゲノムデータと基本的な臨床情報にとどまることが課題として指摘される中、多層的オミックスデータと臨床情報が連結された疾患別情報統合データベースを構築したい考え。