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マウス頭蓋冠形成初期のEMM発生過程や分化能を解明-東京医歯大ほか

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2021年01月27日 AM11:45

頭蓋冠の形成にはSOMとEMMの協調的な相互作用が必要

東京医科歯科大学は1月22日、マウスにおいてこれまで不明だった頭蓋冠形成初期に頭頂部に移動する細胞群の発生過程や分化能を明らかにすることに成功したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科分子発生学分野の井関祥子教授とVu Hoang Tri大学院生、顎顔面解剖学分野の武智正樹講師の研究グループと、東京大学医学系研究科の栗原裕基教授らとの共同研究によるもの。研究成果は、「Scientific Reports」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

頭蓋冠は主に前頭骨や頭頂骨から成り、脳を保護し、脳の発育とともに成長していく。胎生期における頭蓋冠の発生異常は、頭蓋冠縫合早期癒合症などの先天性疾患の原因になると考えられている。そのため、頭蓋冠の発生過程を分子レベルで理解することは重要な課題とされているが、いまだに不明な部分が多い。

マウス頭蓋冠骨は、胎生期に眼球の直上にある細胞群(Supraorbital mesenchyme:)が骨を形成する細胞となって頭頂部に成長拡大することで形成される。このSOMの成長前に頭頂部に移動する細胞群(Early migrating mesenchyme:)が知られており、SOMとは異なり真皮や髄膜を形成すると考えられている。頭蓋冠の形成にはSOMとEMMの協調的な相互作用が必要とされているが、SOMに着目した頭蓋冠骨形成メカニズムについて多くの研究がなされてきた一方で、EMMの詳細な発生過程や分化能についてはこれまであまり検討されてきていなかった。

頭蓋冠形成初期にEMMが髄膜層と真皮層に分化し、異なる応答能を獲得

研究グループは、マウスの遺伝子組み換え技術を使って、骨・軟骨形成に関与する遺伝子をEMMで強制的に発現させ、正常な発生メカニズムを変化させることで、EMMの発生過程や分化能を調べる研究を計画。ホメオボックス遺伝子の1つで骨・軟骨形成の誘導因子であるDistal-less homeobox 5(Dlx5)を、EMMを含む神経堤細胞全体で強制的に発現させたマウス(NCCDlx5マウス)の胎児における頭蓋冠発生を調べた。その結果、頭頂部に異所性の骨と軟骨が同時に形成されるという、これまでに報告されたことのない現象を発見した。詳細な組織学的解析により、異所性軟骨は髄膜の硬膜内に、また異所性骨は真皮内に形成されていることがわかった。さらに、野生型マウスとNCCDlx5マウスのEMMの発生を分子レベルで比較。野生型マウスにおいてEMMは胎齢11.5日頃に髄膜層と真皮層の分子マーカーであるFoxc1とDermo1をそれぞれ発現する2つの細胞層に分化していると考えられた。

一方、NCCDlx5マウスにおいては、Dlx5の強制発現によってFoxc1を発現している髄膜層の中の硬膜形成領域においてPDGFRαシグナルが増加して異所性軟骨が形成されることが判明。また、野生型マウスのDermo1を発現する真皮層では別のホメオボックス遺伝子であるMsx2が発現することでEMMの骨分化が抑制されている一方、NCCDlx5マウスではDlx5の強制発現によって真皮層でのWnt/β-カテニンシグナルやBmpシグナル等の骨分化誘導シグナルが増加して異所性骨が形成されることがわかった。頭蓋冠形成初期段階である胎齢11.5日のマウスEMMにおいて、Dlx5の強制発現により異所性の軟骨と骨の形成誘導が開始されたことは、この時期のEMMがすでに異なる応答能を示す2つの細胞層に分化していることを強く示唆する。

頭部における異所性の骨・軟骨の形成メカニズム解明への貢献に期待

今回の研究は、これまであまり注目されてこなかったEMMに着目し、この細胞群が頭蓋冠形成初期に髄膜層と真皮層に分化し、異なる応答能を獲得することを明らかにしたという画期的なもの。頭蓋冠の骨はSOMから形成されるが、EMMから形成される髄膜との相互作用が極めて重要であることがわかっており、同研究結果より、今後EMMにおける髄膜の形成メカニズムや骨を形成するSOMとの相互作用の詳細が明らかになってくると期待される。また、硬膜内に異所性に軟骨が形成される例は、ヒトの疾患や他の哺乳動物でも報告されている。

「ヒトの頭蓋骨でまれに見られる縫合骨が、EMM由来である可能性が指摘されており、本研究結果は頭部における異所性の骨・軟骨の形成メカニズムの解明に貢献することも期待される」と、研究グループは述べている。

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