政府は、30年に世界最先端のバイオエコノミー社会実現に向け、19年6月に「バイオ戦略2019」を策定した。国内外の情勢に応じて迅速に対応し、戦略を充実する必要から毎年見直しを行い、更新することになっている。
2020年6月には、19年版バイオ戦略の内容を踏まえつつ、新型コロナウイルスへの対応を追記した20年版のバイオ戦略(基盤的施策)を取りまとめていたが、その具体的施策パッケージとして市場領域施策確定版を策定し、全体像を示すことになった。
九つの市場領域のうち、バイオ医薬・再生医療・細胞治療・遺伝子治療関連産業では、30年に目指すべき姿として、日本発の抗体医薬品、核酸・中分子医薬品や再生・細胞医療・遺伝子治療製品のグローバル展開が進み、本格的な産業化と巨大な新市場創出を実現。日本が同分野での世界標準をリードすることを掲げた。
また、モノづくり技術などを強みに細胞培養・運搬・受託製造のデジタル化・AI化・機械化を図り、原料の細胞等の供給から製造まで一貫したシステムを開発し、創薬分野の共通的な関連産業市場を押さえることで、再生医療で本格的な産業化が実現する際に大市場を獲得できるとした。
ただ、疾患を限定しないモダリティ(創薬技術の方法・手段)ごとの研究開発により、新たな医療技術等を多様な疾患に効果的に展開することが課題と指摘。開発製造実証施設を中核に、病院やバイオバンク、サプライチェーン関連産業など一貫した研究開発を行う拠点機能を構築すべきとした。
具体的には、産学官が連携し、開発・製造等のサプライチェーンを支えるCROやCDMOなどの関連産業を含め、国内外から集積する国際的な開発・製造実証拠点の整備を挙げた。経済産業省は、20年代前半に各モダリティに対応したCRO、CMO/CDMOやベンチャーなどの事業化・新規市場参入の支援・促進制度を検討する。
規制については、厚生労働省で革新的医薬品・医療機器等の開発を進めるための薬価制度など、イノベーションの適切な評価を検討する。リアルワールドデータを医薬品・医療機器等の臨床研究・治験や薬事承認申請のエビデンスとして活用するためのルールを整備する方針だ。
一方、生活習慣改善ヘルスケア、機能性食品、デジタルヘルス市場領域では、世界的に生活習慣病が増加し、世界の健康関連市場が拡大するとし、バイオとデジタルが融合し、診断・治療と予防・共生が連携した末永く社会参加できる社会を実現。
公的保険外ヘルスケアサービスは16年時点の25兆円から25年時点には33兆円に引き上げる。