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悪玉菌が乳がんの発症・転移に関与する可能性-米ジョンズ・ホプキンス大ほか

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2021年01月20日 PM01:00

全ての乳房組織サンプルと乳がん経験者の乳頭分泌液データからB. fragilis菌検出

米国ジョンズ・ホプキンス大学は1月6日、悪玉菌の1つで、毒素を分泌する腸管毒素原性バクテロイデスフラジリス菌(Enterotoxigenic Bacteroides fragilis、)をマウスの腸または乳管に移入すると、乳がん細胞の増殖と転移が促進されることを発見したと発表した。これは同大医学部のDipali Sharma教授、Sheetal Paridaフェローらの研究グループによるもの。研究成果は、「Cancer Discovery」に掲載されている。


※イメージ

乳がんを発症する背景として、年齢や遺伝的変化、放射線療法、家族歴といった複数の確立された要因が特定されているにもかかわらず、いずれにも該当しない多くの女性が乳がんを発症している。また、これまで微生物は消化管、鼻腔、皮膚などに存在し、乳房組織は無菌であると考えられてきたが、最近乳房にも微生物叢が存在することが明らかとなった。しかしながら、乳房の微生物叢が生物学的にどのような影響をもたらすのかは不明だった。

研究グループはまず、公開されている臨床研究データから、良性および悪性の乳房組織と、乳がん経験者および健常者の乳頭分泌液の微生物組成データについてメタ解析をした。その結果、すべての乳房組織サンプルおよび乳がん経験者の乳頭分泌液から、(B. fragilis)が検出された。

マウスにETBF菌投与で乳房が前がん状態に変化

続いてマウスを用いて検討。大腸炎や大腸がんの悪性化にかかわるETBF菌をマウスに経口投与し観察した。すると、ETBF菌がマウスの腸に定着し、その後、3週間以内にマウスの乳房で前がん状態である乳管の過形成が観察された。また、マウスの乳頭に直接ETBF菌を注射する実験を行ったところ、2〜3週間以内に過形成のような症状が現れた。ETBF菌の毒素にさらされた乳房細胞は、さらされていない(非毒素性B. fragilisを移入された)乳房細胞に比べ急速な腫瘍増殖を示し、より悪性度が強い腫瘍を形成したことがわかった。

さらに、さまざまなマウスモデルで解析した結果、72時間毒素に曝された乳房細胞は、「毒素の記憶」を保持し、がんの発生、転移性病変の形成が可能になることがわかった。加えて、-βカテニンのシグナル伝達経路が、EBFT菌の毒素による乳房組織におけるがん化の促進に関与していることも明らかになった。

今後、ETBF菌以外の乳がん発症に関わる腸内細菌を探索

今回の研究から、乳がんの発生にETBF菌が関与する可能性が示された。また、腸内細菌叢の乱れ、または発がん機能を備えた毒素原生微生物が腸に生息している場合、新たな乳がん発症のリスク因子となる可能性も示唆された。同定されたETBF菌はその1つに過ぎず、他にもがん化に関わる菌がある可能性が考えられるという。研究グループは今後ETBF菌がどのように体内を移動するか、ETBF菌だけがヒトの乳房細胞の形質転換を直接誘発するのか、他の微生物叢も乳房に対して発がん性を有するかどうかなど、詳しいメカニズムを明らかにしていく予定だとしている。

研究グループは、腸内細菌のスクリーニングについても言及。「今後新たに発がんリスクと関連がある腸内細菌が見つかり、乳がん発症リスクが高い女性の腸内細菌を検査した場合、特定の腸内細菌を保持する割合が高い値を示すかもしれない。将来的には、検便と同じくらい検査が簡単になる可能性もあり、腸内細菌のスクリーニングが乳がんの発見に有用となるかもしれない。一方で、健康的な食事や運動、BMIを正常値に維持するなど、良い腸内環境を保つことも大切だ」と、述べている。

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