日病薬は今年度、タスク・シフティング推進事業特別委員会を設置。眞野成康氏(東北大学病院教授・薬剤部長)が委員長に就き、▽タスク・シフティング取り組み事例の収集▽現状把握のための全国調査▽好事例周知のためのセミナー開催――に取り組んでいる。
事例収集は、2020年11月から日病薬のウェブサイトで開始した。今月中旬までに報告があった事例は計49件となっている。具体的には、▽院外処方箋の問い合わせ簡素化▽癌患者の支持療法の設計や実行▽B型肝炎ウイルス再活性化を把握する検査オーダ入力▽救急搬送された患者の服薬情報把握――などに薬剤師が関わる事例が全国の医療機関から示された。事前に合意したプロトコールに基づき医師等と薬剤師が協働で行う薬物治療管理(PBPM)の方法を活用した事例が多く見られている。
今後も数年かけて継続的に事例を集め、データベース化して公開する。第1段階として、今春頃に収集した事例のデータを公開する計画だ。
収集した事例の中から先進的な好事例を抽出し、ウェブサイトやセミナーで会員に周知することにも取り組む。第1回目のセミナーは2月21日にオンライン開催を予定している。
このほか、現状を把握するため全国の医療機関を対象に調査を実施する。医師の業務負担軽減に役立つ薬剤師の業務として、薬剤の種類や投与量等の変更、医師の診断・検査結果に基づく処方入力など、各施設で実施している業務、今後取り組む予定である業務を病棟機能別に調べる。
今年度の調査結果は近くまとまる見通しで、来年度以降も同様の調査を実施する考え。調査時点での実態を明らかにすると共に、実施施設が増えている業務などの経年変化を追跡する計画である。
医師等のタスク・シフティングを推進する上で、PBPMは現行の法規制下でも実施可能とされているが、まだ取り組む医療機関は少ない。具体的な事例を周知することで、PBPMなどに取り組む医療機関を増やしたい考え。
15日に開いた記者会見で木平健治会長は、「紹介した事例を参考に、可能な医療機関から実践してもらいたい」と話した。
病院薬剤師によるタスク・シフティングの推進は、医師の業務負担軽減だけでなく、医療の質向上にも役立つと見られる。眞野氏は、「医師の働き方改革から始まったが、もともとはチーム医療推進の延長線上にある話だと思う。医師の業務負担軽減は重要な要素だが、それだけでなく、医療の質や医療安全の向上を考えて薬剤師が専門性を発揮することが大事」と述べ、多くの医療機関で取り組むよう呼びかけた。