石灰化結節に起因する急性心筋梗塞、カテーテル治療の有効性は不明だった
国立循環器病研究センターは1月15日、石灰化結節に起因する急性心筋梗塞に対し、薬剤溶出性ステントを用いたカテーテル治療の有効性を報告したと発表した。この研究は、同センター心臓血管内科の菅根裕紀研修生、心臓血管内科部冠疾患科の片岡有医長、野口暉夫副院長らによるもの。研究成果は、「Atherosclerosis」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
突然死の原因にもなりうる急性心筋梗塞は、主にコレステロールを多く含み柔らかい動脈硬化性粥腫の破綻により発症する。しかしながら、一部の症例は、コレステロールとは異性な石灰化成分が冠動脈内へ突出すること(石灰化結節)により急性心筋梗塞を発症する。急性心筋梗塞に対する薬剤溶出性ステント治療は、ガイドラインにて推奨されているスタンダードな治療だが、このような石灰化結節に起因する急性心筋梗塞症に対するカテーテル治療の有効性は不明なままだった。
死亡・心筋梗塞再発・再治療頻度のハザード比7.68
研究グループは、同センターに入院した急性心筋梗塞の患者657例を解析。全症例の5.3%は、石灰化結節に起因する急性心筋梗塞症であり、高血圧、慢性腎臓病、維持透析などの既往を高頻度に有していた。薬剤溶出性ステントを用いたカテーテル治療を行った急性心筋梗塞症において、石灰化結節を有する症例は非石灰化結節症例に比して、死亡・心筋梗塞再発・再治療頻度のハザード比が7.68と高く予後不良だった(95%信頼区間4.61-12.80、p値<0.001)。再治療を要した石灰化結節症例の82.4%においては、ステント内に石灰化結節が再度突出し冠動脈狭窄を引き起こす特徴を有していた。
今回の研究からは、石灰化結節に起因した急性心筋梗塞症例に対する薬剤溶出性ステントを用いたカテーテル治療の有効性は十分なものではなく、新たな治療対策の必要性が示唆された。カテーテル治療の有効性が乏しかった原因として、ステント留置によりステント外に押しつぶされた石灰化結節組織が、再度ステント隙間から冠動脈内に突出することが挙げられる。薬剤溶出性ステントは、ステント表層に塗布した薬剤により、ステント留置後に形成される新生内膜増殖抑制に有効だが、石灰化組織の増成・突出に対しては有効性が乏しいものと考えられるという。
切削治療や薬物治療など、有効な治療を目指し研究を継続
同センターでは、このような石灰化結節の狭窄病変に対して、ローターブレーターなどの切削治療により治療成績の改善を目指しており、その有効性についても多施設において検証する研究が進行中。カテーテル治療の他に、石灰化形成を抑制しうる薬物治療の可能性も期待されるが、現時点で石灰化を退縮しうる薬剤は臨床導入されていない。研究責任者の片岡氏は、石灰化結節形成に寄与するバイオマーカー探索研究についても実施している。石灰化結節に対する有効な薬剤・カテーテル治療の開発・確立を目指し、研究は継続されている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース