感染性増加が懸念される変異株と共通の変異を一部に有する新たな変異株
国立感染症研究所は1月10日、1月2日にブラジルから到着した渡航者4名から、1月6日に検出した新型コロナウイルスの新規変異株について、現時点での情報を公表した。
画像は感染研サイトより
当該新規変異株は、B.1.1.248系統に属し、スパイクタンパク質に12箇所の変異を認める。この系統名は、新型コロナウイルスに関して用いられている分類方法「Pangolin」(COVID-19 Lineage Assigner Phylogenetic Assignment of Named Global Outbreak LINeages)による分子系統IDによるもので、B.1.1.248系統は、ブラジルで拡散していたB.1.1.28の系譜の一部(下流にある系譜)。なお、英国VOC 202012/01はB.1.1.7、南アフリカ501Y.V2はB.1.351に該当する。
当該変異株は、感染性の増加が懸念される変異株のVOC-202012/01や501Y.V2と同様に、スパイクタンパク質の受容体結合部位にN501Y変異を認めるほか、501Y.V2と同様にE484K変異を認める。E484の変異は、SARS-CoV-2を中和するモノクローナル抗体からの逃避変異として報告されていた。さらに、E484K変異が、回復者血漿からの逃避変異株で見られるという実験データとE484が変異すると回復者血漿でのシュードタイプウイルスの中和抗体価が10倍程度低下する(COVID-19回復者の血清中に誘導された抗SARS-CoV-2抗体の存在下でも、in vitroでウイルスの細胞感染を抑制しにくい)という実験データが報告されている。すなわち、これまでのウイルスに対する免疫は、E484変異を持つウイルスに対して効果が減弱する可能性が懸念されている。ブラジルでは、1月6日にB.1.1.248系統のE484K変異を認める変異株による再感染症例の報告があったが、当該新規変異株と同一ではない。
感染性や病原性、検査法やワクチンへの影響等は現時点では判断が困難
当該変異株については、現時点では、遺伝子の配列に関する情報に限られている。そのため、ヒトにおける感染性や病原性、検査法への影響、ワクチンへの影響等については、現時点での判断は困難であり、引き続きの調査が必要とされる。感染研は、「当該変異株の感染者は、個室での管理下におき、感染源、濃厚接触者の追跡と管理、臨床経過等を含めた積極的疫学調査を行うことが望ましい」とし、「変異株であっても、個人の基本的な感染予防策は、従来と同様に、3密の回避、マスクの着用、手洗いなどが推奨される」と述べている。