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再発卵巣明細胞がん、X染色体長腕27.3領域マイクロRNAが薬剤抵抗性に関与-名大

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2021年01月14日 PM12:30

日本人で2番目に多い卵巣明細胞がんは抗がん剤耐性が高い

名古屋大学は1月12日、卵巣明細胞がんにおいて、X染色体長腕27.3領域に存在する複数のマイクロRNAが、再発や抗がん剤抵抗性に関与していることを明らかにしたと発表した。これは、同大大学院医学系研究科産婦人科学の吉田康将特任助教、横井暁助教、梶山広明教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Oncogene」に掲載されている。

卵巣がんは、早期発見が困難であり、治療を繰り返すたびに抗がん剤耐性を獲得するため、依然として予後不良な疾患だ。また、卵巣がんは、漿液性がん、明細胞がん、類内膜がん、粘液性がん等、さまざまな組織型が知られており、各組織型で特徴は大きく異なっている。全世界的には漿液性がんの頻度が最も高いため、広く研究が進められているが、日本人で2番目に多い明細胞がんについては、あまり研究が進められていない。明細胞がんは、抗がん剤耐性が高いという特徴をもっているため、その抗がん剤耐性を克服することが求められている。

マイクロRNAは、複数の遺伝子発現を制御する小分子であり、がんの進展に深く関与している。そのマイクロRNAの遺伝子は、ゲノム上に均一に存在するのではなく、特定の領域に密集して存在していることが知られており、マイクロRNAクラスターと呼ばれている。1つのマイクロRNAの発現変動だけでも、細胞の性質を変えるのに十分な効果があることが知られており、複数のマイクロRNAが同時に発現変動するマイクロRNAクラスターは、細胞の性質に非常に強い影響を与えている可能性がある。研究グループは、これまでに卵巣がんのマイクロRNAに関わる研究を進めてきた。

画像はリリースより

再発卵巣明細胞がん4例で4つのマイクロRNAが発現低下

今回研究グループは、初発の卵巣明細胞がん検体20例(いずれもステージI期)と、再発の卵巣明細胞がん検体5例を用いて、マイクロRNAシーケンス解析を行った。その結果、初発がんと再発がんでは異なるマイクロRNA発現パターンを示した。そして、再発がんの5例中4例で、X染色体長腕27.3番領域にあるマイクロRNAクラスターに属している4つのマイクロRNA(miR-508-3p、miR-509-3p、miR-509-3-5p、miR-514a-3p)が著明に低下していることを発見した。

さらに、進行期の明細胞がんにおいて、卵巣病変と大網転移病変のマイクロRNAの発現パターンの解析を行ったところ、大網転移病変においてもそれらの4つのマイクロRNAの発現が低下していることが明らかになった。このことから、それらのマイクロRNAは、転移や再発といった明細胞がんの悪性化に関与していることが示唆された。

miR-509-3p/miR-509-3-5pがYAP1を介した抗がん剤耐性に関連か

また、それらのマイクロRNAの機能を明らかにするために、明細胞がんの細胞株を用いた実験を行った。その結果、miR-509-3pおよびmiR-509-3-5pを強制発現させると、がん細胞のシスプラチン感受性が増強され、細胞死が誘導されることがわかった。さらに、次世代シーケンサー解析を通して、これらのマイクロRNAの強制発現によりYAP1遺伝子の発現が低下することが明らかになった。加えて、YAP1の発現を低下させたり、その阻害剤を用いたりすることによっても、シスプラチン感受性は増強されたことがわかった。さらに、YAP1の発現は、前述の再発明細胞がん検体においては発現上昇していることも明らかになった。これらの結果から、明細胞がんにおいて、miR-509-3pとmiR-509-3-5pは、YAP1を介した抗がん剤耐性に関わることが示唆された。

今回同定したマイクロRNAの機能や、そのターゲット遺伝子の機能をさらに追及することにより新たな卵巣がんの治療法の開発につながることが考えられる。「なぜ再発がんでX染色体長腕27.3領域クラスターの発現が低下するのかを探ることで、再発をきたすメカニズムの解明につながり、再発抑制に関する研究に発展することが期待される」と、研究グループは述べている。

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