発症頻度約4万人に1人の希少疾患「ファブリー病」
大阪大学は1月8日、希少疾患であるファブリー病の早期診断および治療効果判定に、尿中に見られるマルベリー小体が有用であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の難波倫子助教、猪阪善隆教授(腎臓内科学)、酒井規夫教授(成育小児科学)、名古屋市立大学大学院医学研究科腎臓内科学分野の濱野高行教授、大阪大学医学部附属病院臨床検査部の日高洋部長らの研究グループによるもの。研究成果は、欧州科学誌「Nephrology Dialysis Transplantation」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
ファブリー病は、酵素であるαガラクトシダーゼの遺伝子に異常を生じる遺伝病の一種で、発症頻度が約4万人に1人の希少疾患。αガラクトシダーゼは脂質を分解する酵素で、遺伝子異常により酵素の活性(機能)が低下することで、分解されなかったグロボトリアオシルセラミド(Gb3)という脂質が、細胞内小器官のライソゾームに蓄積する。Gb3が蓄積するとライソゾームの機能が障害され、細胞機能の低下を来しさまざまな症状の原因となる。
小児期から手足の痛みや汗をかきにくいといった症状が見られ、成人期になり心臓、脳血管、そして腎臓といった重要な臓器にも障害を生じ、これらが主な死亡原因となる。心臓、脳血管の症状は30歳以降から見られるようになるが、腎疾患は20歳以降と比較的早期に出現し、40歳以降で透析になることがある。
ファブリー病の診断は、遺伝子変異で欠損したαガラクトシダーゼの活性測定や遺伝子検査で行われる。一方で、全身にさまざまな症状を生じるため、同疾患を疑われず見逃され病気が進行するケースもある。
現在、ファブリー病治療としては、欠損したタンパクを補う治療が数種類存在。さらに、これらの治療は早期から開始する方が高い効果を得られることもわかっている。しかし、ファブリー病の早期診断に有用で簡便な検査がないことが、課題となっている。
尿中マルベリー小体、従来の腎疾患指標よりも早期に出現
研究グループは、尿沈渣を染色することで、尿中マルベリー小体が、ポドサイトの細胞質内にあるGb3が蓄積したライソゾームに由来することを明らかにした。さらに、尿中マルベリー小体は従来腎疾患の指標とされていた尿タンパクよりも早期に出現することを示した。このことは、ファブリー病による腎病変の早期発見に重要であることを意味するという。
ポドサイトは、腎臓の中でもGb3の蓄積しやすい細胞。同院では、以前より、尿中マルベリー小体の独自の半定量評価を日常臨床で行ってきた。尿中マルベリー小体は、ポドサイト内のGb3の蓄積が増えるほど尿中マルベリー小体数も増えていたという。さらに、ファブリー病に特異的な治療を開始すると、この尿中マルベリー小体が減少することも明らかになった。
これらの結果は、尿中マルベリー小体が腎臓に対する治療効果の目安になることを意味しているという。このように、研究グループは尿中マルベリー小体の起源だけでなく、その半定量評価がファブリー病の診断・治療において臨床的に有用であることを見出した。
迅速かつ簡便、低コストでの実施が可能に
今回の研究成果により、ファブリー病や同疾患に伴う腎病変の早期診断が期待される。早期診断は早期治療につながるため、将来的に起こりうる腎不全、心不全、脳梗塞といった重篤な合併症の予防につながるという。
尿中マルベリー小体は、通常の尿検査で検出することが可能なので、迅速かつ簡便、低コストで行うことが可能。「患者にも大きな負担をかけない優れた検査である」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・大阪大学 ResOU