医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 【IASR速報】COVID-19における年齢別症例致命割合を公表-感染研

【IASR速報】COVID-19における年齢別症例致命割合を公表-感染研

読了時間:約 3分33秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年01月05日 PM12:00

COVID-19の臨床像や治療効果等を知るためにレジストリ研究を開始

国立感染症研究所は12月28日、)レジストリデータを用いた新型コロナウイルス感染症における年齢別症例致命割合について、病原微生物検出情報()の速報として発表した。


画像はIASR速報より

新興感染症である新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の臨床経過・臨床像に関する情報を、可能な限り速やかに把握し、公衆衛生の現場、医療現場に直接に還元していくことは、喫緊の課題である。そこで、日本国内の医療機関に入院したCOVID-19の患者情報を悉皆的に登録、データベース化し、解析することで、COVID-19の臨床像や治療薬候補の効果等に関するさまざまな点について明らかにすることを目的として、(COVID-19 REGISTRY JAPAN)が立ち上げられた。

同研究は、厚生労働科研費(課題名:COVID-19重症患者等に係る臨床学的治療法の開発、研究開発代表者:国立国際医療研究センター大曲貴夫)を用い、国立国際医療研究センター倫理審査委員会の承認を受けて実施している観察研究。個人情報保護のため、電子カルテより個人情報を含まないデータが登録され、当該データを研究に使用すること等について、ホームページでの情報公開を行い、被験者が拒否できる機会を保障することで同意に代えている。

すでに数々の疫学的特徴を報告、今回は年齢別の予後を解析

現在までの成果として、2020年7月の時点で入力が完了していたCOVID-19入院患者2,638例について、症例の半数以上が男性であり、全体の60%近くがCOVID-19確定例または疑い例と濃厚接触歴があったこと、併存疾患は高血圧(15%)と合併症を伴わない糖尿病(14.2%)が最も多く、66.9%の患者が自宅退院し、7.5%が入院中に死亡したこと等の疫学的特徴が報告された。

また、日本国内におけるCOVID-19流行の第一波(2020年1月26日~5月31日)では、入院時に重症であった症例が多く、発症から入院までの日数が長い傾向にあった。一方、第二波(6月1日~7月31日)では若年層の割合が高く、基礎疾患を有する割合が低かったこと、さらにすべての年齢層において、第一波に比べ症例致命割合(CFR:case fatality ratio、死亡数/流行疾病の診断症例数)が低い傾向にあったことが報告されている。

今回は、年齢別、特に高齢者および基礎疾患の有無での予後を明らかにするために、2020年12月4日時点の登録情報を用いCFRのまとめを行った結果が報告された。

入院し主要項目が入力された1万2,599人が対象

今回の対象患者は、12月2日時点で同レジストリに登録された情報のうち、2020年9月30日までに入院し、以下の主要項目(入院時基本情報(患者背景、曝露歴)、併存疾患、入院時の徴候・症状、入院中合併症、入院中薬剤投与歴、退院時転帰、入院中治療歴)の入力が完了した患者(死亡退院を含む)、433施設1万2,599人。

COVID-19レジストリで情報を取得している基礎疾患は、心疾患(心筋梗塞・うっ血性心不全)、末梢血管疾患、脳血管障害、片まひ、認知症、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患:COPD、慢性肺疾患、気管支喘息)、肝機能障害、腎機能障害、高血圧症、高脂血症、糖尿病、肥満、消化性潰瘍、固形がん、リンパ腫、白血病、膠原病、HIV/AIDSであり、これらの基礎疾患を1つでも有する者を基礎疾患のある患者とした。

基礎疾患のある患者はない患者に比べCFR高く、年齢に従い上昇

全対象患者1万2,599例のうち、60歳以上は4,732例(37.6%)だった。CFRは全対象患者では4.2%(529/1万2,599)、うち、60歳未満0.3%(23/7,867)、60歳以上10.7%(506/4,732)だった。60歳以上の基礎疾患のない患者のCFRは4.0%(45/1,135)であり、基礎疾患のある患者12.8%(461/3,597)に比べ有意に低かった(カイ2乗検定でのp値<0.001)。

基礎疾患なしの年齢群別CFRは、60歳未満0.1%(3/5,879)、60~64歳1.6%(5/304)、65~69歳1.6%(5/304)、70~74歳3.7%(8/215)、75~79歳5.3%(9/171)、80歳以上12.8%(18/141)と、年齢が高くなるにつれて上昇した。特に80歳以上で10%を超えていた。

基礎疾患のある患者の年齢群別CFRは、60歳未満1.0%(20/1,988)、60~64歳4.4%(21/472)、65~69歳7.2%(40/554)、70~74歳7.5%(49/654)、75~79歳12.8%(71/553)、80歳以上20.5%(280/1,364)と、基礎疾患のない患者に比べ高く、年齢が高くなるにつれて上昇した。特に75歳以上で10%を超え、80歳以上で20%を超えていた。

6月1日以降に入院した患者は、5月31日以前に入院した患者に比べCFRは低かった。特に、6月1日以降入院した基礎疾患の無い80歳以上患者のCFRは5%程度、基礎疾患のある75歳以上患者は10%程度、80歳以上でも15%弱だった。

なお、留意点として、同研究では退院が完了した症例からデータの登録を行うため直近の症例の中でも入院が長期化している症例は含まれていないこと、死亡は転帰項目を元に収集しておりCOVID-19との明確な因果関係を調査する項目は取得していないこと、本データ12月2日時点で登録された症例を対象とした結果でありレジストリの登録状況により値が変動すること、一部欠損項目があり加算数と総数が一致しないことがあること、が挙げられている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか
  • 腎臓の過剰ろ過、加齢を考慮して判断する新たな数式を定義-大阪公立大
  • 超希少難治性疾患のHGPS、核膜修復の遅延をロナファルニブが改善-科学大ほか
  • 運動後の起立性低血圧、水分摂取で軽減の可能性-杏林大
  • ALS、オリゴデンドロサイト異常がマウスの運動障害を惹起-名大