27-ヒドロキシコレステロールに着目、トランスポーターURAT1への影響を検討
奈良県立医科大学は12月24日、コレステロール高値が尿酸排泄低下を誘発する機序について発見したと発表した。この研究は、同大・医学部・未来基礎医学の森英一朗准教授、米ヒューストン大学の梅渓通久Assistant Professor、理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター(BDR)・ヒト器官形成研究チームの髙里実チームリーダーの共同研究グループによるもの。研究成果は、「The FASEB Journal」に掲載されている。
画像はリリースより
生体内で産生される尿酸は、その3分の2が腎臓から尿中へ排泄される。過去の研究により、肥満患者では尿酸排泄率が低下することや肥満モデルマウスでは尿酸輸送を行うトランスポーターの発現量が変化していることがわかっており、メタボリックシンドロームと尿酸排泄の関連が示唆されていた。しかし、その詳細な機序については明らかになっていなかった。
今回研究グループは、高コレステロール血症患者で増加している27-ヒドロキシコレステロールに着目し、尿中からの尿酸再吸収を行うトランスポーターURAT1への影響を検討した。
増加した27-ヒドロキシコレステロールがURAT1発現を上昇させ尿酸再吸収を促進、血中尿酸の増加を誘発する可能性
URAT1のプロモーター領域を発現させた細胞に27-ヒドロキシコレステロールを負荷することで、URAT1のプロモーター活性が上昇した。また、エストロゲン拮抗薬・エストロゲン応答配列変異体を使用することで、この上昇はエストロゲン受容体を介した反応であることを明らかにした。27-ヒドロキシコレステロールの血中濃度が上昇しているCyp7b1欠損マウスでは、腎臓中のURAT1タンパク質が増加していることがわかった。
さらに、ヒトiPS細胞から作製した腎臓オルガノイドを用いた試験により、27-ヒドロキシコレステロールがURAT1の遺伝子発現を増加させることもわかった。以上の結果より、高コレステロール血症など血中27-ヒドロキシコレステロールの増加を伴う疾患では、増加した27-ヒドロキシコレステロールが腎臓のURAT1発現を上昇させ、尿中からの尿酸再吸収を促進し、血中尿酸の増加を誘発する可能性が示唆された。これらの知見は、コレステロール高値と高尿酸血症の関連を解明する一助となることが期待される。
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・奈良県立医科大学 報道資料