2週間のウーロン茶摂取によるエネルギー代謝と睡眠への影響を検証
筑波大学は12月23日、ウーロン茶の習慣的な摂取が24時間のエネルギー代謝と睡眠に及ぼす効果を検証し、ウーロン茶やカフェイン飲料350mlを朝昼2回飲んだ場合、睡眠を妨げずに1日の脂肪燃焼が促進されていたことがわかったと発表した。これは、同大国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の徳山薫平教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。
茶の生葉を乾燥・発酵させてつくる過程の発酵度合いの違いによって、緑茶、ウーロン茶、紅茶などさまざまな種類のお茶が作られ、それぞれの成分も異なる。とりわけウーロン茶には、他の茶葉と比べてカテキン類が重合して生成する重合ポリフェノールが多く含まれる。お茶に含まれるカフェイン、カテキンおよび重合ポリフェノールなどがエネルギー代謝に与える効果について、これまでに多くの研究が行われてきた。しかし、それらは主にその急性効果(1回、あるいは1日摂取した場合の効果)の研究であり、お茶の飲用習慣を考慮すると、繰り返し摂取した場合の効果を評価することが、より重要と考えられる。
平成30年度厚生労働省国民健康・栄養調査によると、20歳以上の男性3人に1人、女性5人に1人が肥満で、5人に1人が何らかの睡眠障害を抱えているといわれている。睡眠不足は体重増加と関係しており、睡眠時間の短い者は体重が重い傾向がある。また、睡眠とエネルギー代謝の制御は調節因子を共有して協調していることから、エネルギー代謝に影響することが予想される食品素材の検討に際しては、睡眠に対する影響も考慮することが重要だ。
そこで、今回の研究では、ウーロン茶の習慣的な摂取が1日のエネルギー代謝と睡眠に与える効果について、プラセボおよびカフェインのみを含有した飲料と比較して検証した。
画像はリリースより
睡眠時の脂肪燃焼を促す効果は、ウーロン茶摂取の方がカフェイン摂取よりも大きい
健常男性12人を被験者とし、二重盲検ランダム化比較試験を行った。長時間にわたるエネルギー消費を測定するために、専用の代謝測定室(ヒューマン・カロリメーター)を用いた間接熱量測定を行い、睡眠時も含めた1日のエネルギー代謝を、高時間分解能で測定。具体的には、ウーロン茶(カフェイン51.8mg、重合ポリフェノール62.3mg、カテキン類48.5mg、没食子酸10.7mg、市販ウーロン茶350ml相当量)、カフェイン(51.8mg)のみ、プラセボ飲料の3種について、毎日それぞれを朝食と昼食時に摂取し、2週間目に睡眠と1日のエネルギー代謝を測定した。
その結果、1日のエネルギー消費は、ウーロン茶摂取とカフェインのみ摂取のいずれも、プラセボ試行との差は認めなかったが、1日の脂肪酸化量は増大した。また、ウーロン茶摂取とカフェイン摂取が脂肪燃焼を増やす効果は、睡眠時にも認められましたが、いずれの場合にも睡眠が阻害されることはなかった。脂肪燃焼を促す効果は、ウーロン茶摂取の方がカフェイン摂取よりも大きく、とりわけ睡眠時においてその効果が顕著だったという。これは、食品素材がエネルギー代謝に与える効果を検証する際には、睡眠時も含めた長時間の測定が重要であることを示唆している。また、体温については、ウーロン茶摂取とカフェイン摂取直後に体温上昇が観察されたが、睡眠時にはプラセボ摂取試行との差は認められなかった。
「ウーロン茶摂取とカフェイン摂取の脂肪燃焼効果に差が認められたことから、今後、ウーロン茶に含まれるカフェイン以外の成分(重合ポリフェノール、カテキン類、没食子酸)の代謝調節作用の解析が必要だ。さらに、長期間の習慣的な摂取と肥満防止効果との関連についての検討も課題だ」と、研究グループは述べている。
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