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生後12か月の赤ちゃんが「自分の顔」を認識していると判明-九大

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2020年12月23日 PM12:15

鏡映像に対する自己指向性の反応の成立以前に「自分の顔」を認識している?

九州大学は12月21日、生後12か月の赤ちゃんが、自分の顔画像を見分けていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大人間環境学研究院の橋彌和秀准教授と同学府博士後期課程の新田博司日本学術振興会特別研究員によるもの。研究成果は、「Infant Behavior and Development」に掲載されている。


画像はリリースより

ヒトは、目の前の顔情報と内的な表象(知覚的イメージ記憶)とを比較参照して「誰の顔か」を同定する。中でも「自分の顔」の認識は特別な位置を占め、自己アイデンティティの確立にも重要な意味を持つと考えられる。

赤ちゃんも、日常の経験の中で鏡や写真、動画の視聴等を通して「自分の顔」に対する視覚経験を積んでいく。しかし、自己認知発達の重要な指標とされてきた自己鏡映像認知の研究では、鏡映像に対する自己指向性の反応の成立は、近現代の欧米や日本において1歳半~2歳とされ、その時期以前に赤ちゃんがどこまで「自分の顔」を認識しているのかは未だ不明な部分が多い。

自分の顔と他の乳児の顔を自他合成顔と区別してより長く注視

今回の研究では、「九州大学赤ちゃん研究員」に登録している生後12か月の赤ちゃん(24人)と保護者に参加してもらい、九州大学病院キャンパスおよび大橋キャンパスで研究を実施した。参加児は保護者の膝の上に座り、画面にペアで提示される顔刺激を視聴。その際、赤ちゃんの視線は視線計測装置(Tobii TX300:赤外線及び画像解析技術を用いて非接触で視線を計測する装置。人体には無害)によって計測され、各顔刺激を見ている時間が記録される。顔刺激を見ている時間に差があった場合、赤ちゃんはそれらの顔を区別していると解釈した。同研究では、自分の顔を顔刺激に含む条件(自己顔実験)と自分の顔を顔刺激に含まない条件(比較実験)を設けた。比較実験は、「合成顔に自分の顔を含まれているか」に関わらず、単に人工的に生成された不自然な合成顔のため、乳児の視線運動に影響を与えるのではないかという可能性を排除するために行った。

自己顔実験では、(1)参加児自身の顔、(2)他の乳児の顔、(3)自分と他の乳児を50%ずつ合成した顔をペアで提示した。一方、比較実験では、自分の顔は含まず、(4)、(5)2人の他の乳児の顔、(6)その2人の乳児を50%ずつ合成した顔をペアで提示した。各ペアの実験刺激は、10秒間ずつ提示した。また、保護者には参加児が日頃どれくらいの頻度で、どのような場面で自分の顔を見るかについて回答してもらい、全ての赤ちゃんが少なくとも1日に1回は、鏡や携帯の写真により自分の正面顔を見る経験があることを確認した。

次に、参加児がそれぞれの顔刺激をどれくらい見たのか、時間の割合を分析した。その結果、自己顔実験では、乳児は、(1)自分の顔および(2)他の乳児の顔を(3)自他合成顔とそれぞれ区別し、(1)と(2)のオリジナルの顔をより長く注視した。一方、比較実験では、(4)、(5)、(6)それぞれの顔刺激を見ている時間に統計的に有意な差は見られなかった。

自己顔認知や発達初期の自己アイデンティティについて、今後詳細に検討

この結果は、乳児は顔特徴のわずかな違いを検出して自分の顔が50%混ざった合成顔を、本来の自分の顔や他の乳児の顔と区別できたと考えられる。また、自己顔実験において、自他合成顔をより見なかった傾向は、1歳の乳児が発達した自己の顔表象に基づいて、自分の顔でも他者の顔でもない合成顔を顔処理する際、認知的負荷が生じたため自分の顔が含まれ合成顔への注視を回避したと考察された。

今回の研究成果は、生後1年にわたる自分の顔の視覚経験が自己の顔表象の形成に寄与している可能性を示唆するとともに、発達初期の自己認知において重要な指標とされてきた自己鏡映像認知の成立より前に、自己の顔表象がどの程度成立しているかについて初めて示したものと言える。研究グループは、「今後は、鏡や写真、動画等で自己顔を経験することが自己顔認知の成立に及ぼす影響を詳細に検討するとともに、自己顔処理の発達を出発点として、発達初期における自己アイデンティティのさまざまな側面について多角的に検討していく」と、述べている。

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