ファリシマブの有効性と安全性をアフリベルセプトとの比較で評価
スイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社は12月21日、糖尿病黄斑浮腫(DME)に対して開発中のバイスペシフィック抗体ファリシマブについて、同一デザインの第3相グローバル臨床試験であるYOSEMITE試験およびRHINE試験のトップライン結果を発表した。両試験の詳細な結果は、医学シンポジウムAngiogenesis, Exudation and Degeneration 2021で発表されるとともに、各国の規制当局に対してDMEに対する同剤の承認申請が行われる予定だ。
YOSEMITE(NCT03622580)試験およびRHINE(NCT03622593)試験は、同一デザインの無作為化多施設二重遮蔽第3相グローバル臨床試験。DME患者1,891人(YOSEMITE試験は940例、RHINE試験は951例)を対象とし、ファリシマブの有効性と安全性をアフリベルセプトと比較し評価した。両試験では、ファリシマブ6.0mgを導入期投与後個々の参加者に応じて最長16週間隔で投与する群、ファリシマブ6.0mgを導入期投与後8週間隔固定で投与する群、アフリベルセプト2.0mgを導入期投与後8週間隔固定で投与する群の3群が設定された。3つの群全てにおいて、治験責任医師や参加者の遮蔽化を維持するために、薬剤が投与されない来院日にはシャム投与(硝子体内投与の代わりに、針のないシリンジを局所麻酔下で眼球にあてる措置)がなされた。
同試験の主要評価項目は、1年時点におけるベースラインからの最高矯正視力(BCVA)スコアの平均変化量。副次評価項目は、安全性、個々の参加者に応じた投与間隔群の52週時点における4、8、12または16週間隔で投与した参加者の割合、52週時点における糖尿病網膜症の重症度がベースラインから2段階以上の改善した参加者の割合、BCVAでベースラインから15文字以上の視力改善が認められた参加者の割合の経時変化、BCVAでベースラインから15文字以上の視力低下が避けられた参加者の割合の経時変化、および中心領域網膜厚のベースラインからの変化量の経時変化が含まれる。
1年時点の視力の転帰で非劣性示す
今回、両試験ともに主要評価項目を達成し、ファリシマブの8週間隔の固定投与群および個々の治験参加者に応じた最長16週間隔投与群で、アフリベルセプトの8週間隔投与群と比較し、1年時点の視力の転帰において非劣性が示された。ファリシマブの忍容性は概ね良好であり、新たな安全性上の懸念は示されなかったという。
両試験の副次的評価項目については、個別に投与間隔を調整したファリシマブ投与群において、1年時点で半数以上が16週間隔投与を達成。これまでにDMEに対する新薬候補化合物で実施された第3相臨床試験の中では、初めての水準となる持続性を示したとしている。
Ang-2とVEGF-Aが関与の2経路を別々に遮断、血管を安定化
ファリシマブは眼科領域における初のバイスペシフィック抗体であり、多くの網膜疾患の原因である、アンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)が関与する2つの異なる経路を標的としている。Ang-2とVEGF-Aは血管構造の不安定化により、漏出を引き起こす血管を新たに形成し、炎症を起こすことで視力低下を引き起こす原因のひとつになっている。
ファリシマブは、これら2つの経路を別々に遮断することで血管を安定化させ、網膜疾患を有する人の視力をより良く、より長く保てる可能性を考慮して設計されている。
▼関連リンク
・中外製薬株式会社 ニュースリリース