従来の品質保証法では煩雑で時間がかかるという課題
名古屋大学は12月18日、子宮頸がん治療用チューブ内にある高線量率小線源治療の線源を外側から可視化することに成功し、新たな品質保証ツールを開発したと発表した。これは同大大学院医学系研究科総合保健学専攻の余語克紀助教、小口宏准教授、山本誠一教授らの研究グループと、名古屋大学医学部附属病院、北里大学、国立がん研究センター中央病院、広島大学との共同研究によるもの。研究成果は、「Medical Physics」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
20~30歳代女性の子宮頸がんの発症率が増加している中、高線量率小線源治療は副作用が少なく、子宮頸がんなどに集中して高い線量を投与できるがん治療法だ。治療では、米粒大の小さなγ線源をがんへ運び、線源の止まる位置と止まる時間を制御して線量を投与する。しかし、高い線量率のため、線源動作のエラーの見逃しがあると、誤照射事故が起きる可能性がある。そのため、治療前の検証で、治療チューブ内の線源動作のエラーを目で見てわかりやすい品質保証ツールがあれば、事故を未然に防ぐのに有用と考えられる。しかし、従来の品質保証法では時間がかかり、煩雑であることが課題であった。
治療用チューブからのチェレンコフ光を可視化、従来法と同程度の空間分解能で測定
研究では、目に見えないγ線を可視化するため、プラスチック製の治療チューブからの発光(チェレンコフ光)に着目した。192Irγ線源によって照射された治療チューブからの発光を、CCDカメラを使用して撮影し、発光画像を得た。発光画像から線源の止まる位置を測定したところ、従来の測定法と同程度の空間分解能で測定できた。治療によっては金属製チューブを用いることもあるが、その場合、プラスチックテープを金属製チューブに貼って測定する方法により、線源位置の測定が可能であることがわかった。
広くがん放射線治療の品質保証法に適用できる可能性
これらの方法は、1枚の発光画像を使用して、治療チューブの外側から、中にある線源の位置を測定できるため、高線量率小線源治療の迅速かつ簡単な品質保証法に適していると考えられる。研究グループは、「線源動作エラーを未然に発見することで、さらに、安全ながん放射線治療に寄与すると期待されるうえ、放射線による治療器具の発光を、広くがん放射線治療の品質保証法に適用できる可能性を示すことができるため、さらなる応用も期待される」と、述べている。
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