13のがん種対象「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」の研究成果を検証
国立がん研究センターは12月14日、血液検査による簡便で精度の高い乳がんの早期発見方法の開発を目指し、3,000人を対象とした大規模臨床試験を2020年12月から全国4道県(愛媛県、鹿児島県、北海道、福井県)で順次開始すると発表した。同センター中央病院バイオバンク・トランスレーショナルリサーチ支援室の加藤健室長らの研究グループを中心に、国立国際医療研究センター、東京医科大学、日本対がん協会、東レ株式会社の研究者と、北海道、福井県、愛媛県、鹿児島の各日本対がん協会支部、がん専門病院、大学病院などの協力を得て実施される。
同試験で用いるのは、各検診機関で乳がん検診を受診する人の血液検体だ。がん等の疾患にともなって種類や量が変動することが明らかになっている血液中のマイクロRNAを測定する。この測定には、13種類のがんを対象にした「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」(2014~18年度)で開発された診断モデルと検出技術を用いる。この基礎研究での成果を実際のがん検診で応用できるかどうかを検証するためこの試験は計画された。13種類1つひとつのがんについて精度を検証していく必要があるとの考えから、まずは検出方法の開発が先行している乳がんを対象に初めて実施されるという。
乳がん検診対象3,000人のマイクロRNAを測定
対象は、各検診機関で乳がん検診を受診する40~69歳で文書による同意が得られた人。3,000人(マンモグラフィーで要精検と判定された2,000人、精検不要と判定された1,000人)を登録目標とし、参加者は全員、マンモグラフィー検査のほか、乳腺エコー検査を受ける(マンモグラフィーで「要精検」と判断された人は精密検査で、「精検不要」と判断された人には本研究による乳腺エコー検査)。採血は9mlで、マイクロRNAがんマーカーを東レの「3Dジーン」という技術で測定する。
マンモグラフィーの結果、乳腺エコーの結果、マイクロRNAがんマーカーの測定結果を比較し、分析する。がんの発見については、まず精密検査による発見で分析し、最終的にはがん登録の情報をもとに分析する。なお、マイクロRNAがんマーカー測定結果と、がん発見との関連を評価するのが同試験の目的であるため、マイクロRNAの測定結果は、参加者には知らせない。
低侵襲の血中マイクロRNAがんマーカーが、乳がん検診で応用されることに期待
血液検査によるがん検診は、手軽で侵襲性が少ないことから、その開発が期待されている。例えば、現行のがん検診の手法にはX線を使うものがあるが、X線の被ばくを減らせるなど、検査時のさまざまな負担が軽減される。しかし、血液検査によるがん検診の精度に関しては、まだ十分な検証が行われていない。がん検診に適した検査には、「健康な人(症状のない人)の中から早期のがんを発見できる」「早期治療により死亡率減少につながる」「検診を行うことによる不利益が小さい」「安価に検査できる」といったことが求められる。既存の検診手法が確立している場合は、その手法と比較して、評価することも欠かせない。研究グループは、「本試験によって、血液中マイクロRNAがんマーカーの乳がん検診での応用につながることが期待される」と、述べている。
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・国立がん研究センター プレスリリース