政府は現在、米英の製薬企業3社から計2億9000万回分のワクチン供給を受ける予定としている。このうち、ファイザーとモデルナのワクチンは医療機関での超低温管理が必要になることから、厚労省は「マイナス75℃の冷凍庫3000台、マイナス20℃の冷凍庫7500台を確保予定」と説明。各自治体の人口をもとに公平な割り当てにし、「年度内に医療機関に納入できるよう調整したい」とした。
ファイザーは、国内倉庫からドライアイスを入れた保冷ボックスに保管し、医療機関や接種会場に配送する。モデルナも、国内倉庫から卸売業者を経て医療機関等に運ぶ。
一方、アストラゼネカの製品は、季節性インフルエンザワクチンと同様に冷蔵庫で保管し、特別な対応は不要としている。ワクチンの流通、接種の混乱を避けるため、医療機関が卸売業者に発注するのではなく、国や自治体が配分量を月に2~3回の頻度で決め、医療機関に納入する。
国は、ワクチンの割当量、接種実績、在庫量等の情報を蓄積させ、関係者間で共有するクラウドシステムを構築する。同システムが持つ情報のうち、接種できる医療機関、ワクチンの種類、予約受付状況などはオンラインで公開し、国民がリアルタイムで閲覧できるようにするとした。
実際の接種では、希望者は原則として居住する市町村で接種する一方、長期間にわたって入院しているなどやむを得ない事情がある場合は、居住地以外の市町村で接種可能とした。医療機関、市町村が設ける会場のどちらでも実施でき、接種対象者は市町村が発行したクーポン券を医療機関に持参して接種を受ける。
クーポン券配布の優先順位として高齢者、基礎疾患を持つ人の順としたが、医療従事者と高齢者の優先順位については、「まだ決まっていない」(厚労省)としている。
接種を担う市町村の視点から、川俣純子委員(那須烏山市長)は「自治体と医療機関の調整が難航する場合もあり、実施まで時間がかかることを懸念している。接種開始時期にばらつきが生じないよう医師会と調整してほしい」と要望。
また、小規模な自治体では個別接種が基本になっているとして、「集団接種に関するノウハウも人材もない。医師等の医療者に関する調整も相当難航すると思うので、対策を実施すべき」と訴えた。