同剤に混入していた睡眠導入剤の成分であるリルマザホン塩酸塩水和物は1錠当たり5mg。同製剤を1日4回服用した場合には20mgとなり、通常臨床用量の10~20倍に達する大量の成分が混入していた。
220を超える医療機関に納入され、混入したリルマザホンの影響によるものと考えられる患者の健康被害事例は128件と100件を超えた。ふらつきやめまい、意識消失、強い眠気などを生じ、甚大な健康被害として自動車事故、精神・神経系症状による緊急搬送や入院、転倒についても報告があり、今後も増える可能性がある。
福井県は同社に対し、患者の健康被害を拡大させないことを最優先に指導してきた。処方を受けた患者364人全員の特定や患者への服薬中止などの連絡対応は完了したことから、医薬品医療機器等法第69条に基づき、同社工場に立ち入り調査を行い、作業記録や製造現場を確認した。今後も必要に応じて調査を実施し、調査結果によっては行政処分も検討する。
イトラコナゾールの回収事案をめぐっては、今月1日以降、岐阜や大阪、佐賀の薬局から同剤を服用後に副作用情報が複数報告された。同社が製造記録を確認したところ、抗真菌剤に睡眠導入剤を誤って混入していたことが発覚し、4日に同社から厚労省に連絡。同日夕には該当する1ロットについてクラスIの自主回収を発表した。同社は「作業上の人為的なミス」が原因とし、チェック体制に問題があったと認めている。
さらに7日には、回収対象品以外の全てのイトラコナゾール製剤について、承認書にはない製造工程が実施されていたことが判明したとして、同社はクラスIIの回収に着手した。
医薬品業界にも大きな影響を与えそうだ。日本薬剤師会は、使用中止と自主回収への協力を呼びかけると共に、「医薬品への信頼を根本から揺るがす。製造販売業者にしかるべき対応の申し入れを行う」との通知を会員向けに発出した。
日本ジェネリック製薬協会の澤井光郎会長は11日の中央社会保険医療協議会薬価専門部会で、「患者や医療機関、保険薬局、流通関係者、行政関係者の方に深くお詫び申し上げる」との声明を発表。「業界全体に関わる問題として重く受け止め、加盟各社にコンプライアンス遵守を徹底し、信頼回復に努めていく」と述べた。
日本製薬団体連合会の手代木功会長も「後発品1企業の事案ではなく、業界全体として製造管理、品質管理を徹底する機会と認識している」と語った。