自閉スペクトラム症と診断された子どもを含む720人の発達マイルストーンを分析
弘前大学は11月25日、自閉スペクトラム症などの神経発達障害の早期発見における母子健康手帳の活用について調査した結果を発表した。この研究は、同大の足立匡基准教授、髙橋芳雄准教授(保健学研究科/心理支援科学科/子どものこころの発達研究センター)、森裕幸(子どものこころの発達研究センター)、中村和彦教授(医学研究科/子どものこころの発達研究センター)らと、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の廣田智也先生(医学研究科神経精神医学講座客員研究員)らとの共同研究によるもの。研究成果は、「Autism Research」に掲載されている。
研究は、2013年から2018年にかけて5歳児発達健診の二次健診に参加した720人の子どもを対象とした。参加した子どもは、弘前大学医学部附属病院で対面の検査を受け、自閉スペクトラム症を含む発達障害の有無について精査された。結果として、124人が自閉症スペクトラム、331人が他の発達障害(注意欠如多動症・発達性協調運動症・知的発達症)、そして残りの265人が発達障害診断なしと分類された。
研究グループは、母子手帳の発達マイルストーンに関する項目を、運動、社会的相互交流、コミュニケーション、自立(食事や衣服の着脱など)の4つの領域に分類し、非発達障害群と発達障害群、自閉スペクトラム症とその他の発達障害群をそれぞれ比較した。
12か月時点で発達障害群は自立以外の領域で遅れ
その結果、発達障害群と非発達障害群との比較では、12か月までに自立を除く全ての領域で、発達障害群に遅れが見られた。24か月までには、発達障害群において4つの全ての領域で遅れが見られ、36か月時点でも同様の結果が示された。
自閉スペクトラム症とその他の発達障害群との比較では、12か月時点では明らかな違いは見られなかった。しかし、24か月までに、自閉スペクトラム症と診断された群は社会的相互交流とコミュニケーションの領域でその他の発達障害群よりも遅れが見られ、12か月の「バイバイ、コンニチハなどの身振りをしますか」、18か月の「うしろから名前を呼んだとき、振り向きますか」という項目の遅れが顕著であった。36か月時点でも同様の遅れが見られることがわかった。また、自立の領域は36か月までにその他の発達障害群よりも遅れが見られることがわかった。運動の領域は、自閉スペクトラム症とその他の発達障害群の間で違いは見られなかった。
他国の発達マイルストーン項目を比較する国際研究への発展に期待
母子手帳は、乳児死亡率の低下を目的に1947年から日本で使用され始め、その後多くの国で使用が拡大し、大きな公衆衛生的貢献を果たしてきた。しかし、母子手帳には多くの重要な子どもの発達マイルストーンを評価する項目が含まれていたにもかかわらず、発達障害の早期発見にどのように貢献するかについては、これまで研究されていなかった。
「研究結果は、母子手帳の科学的利用性を証明し得るものであり、今後のさらなる研究に向けての重要な第一歩と考えられる。今後、母子手帳を使用している他国の発達マイルストーン項目を比較し、医療や母子保健制度が発展途上の国々でも同様に、母子手帳が発達障害の早期発見に利用・貢献できるかといった国際研究への発展が期待される」と、研究グループは述べている。
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・弘前大学 プレスリリース