7日現在で、ふらつきや躁うつ、意識障害や意識消失など63例の副作用が報告されている。福井県医薬食品・衛生課は、「早急に自主回収を完了させることが先決。今後、必要に応じて立ち入り検査などを実施していく」とコメントしている。
クラスIの自主回収を行うのは、福井県あわら市で製造された同剤100錠の包装規格929箱で、対象ロット番号「T0EG08」。小林化工が製造販売し、Meiji Seika ファルマと共同販売を行っている。9月28日~今月3日までに出荷されている製品が対象となり、それ以前の出荷製品には混入はないという。納入施設数は現在調査中。
混入が判明したリルマザホン塩酸塩水和物は、ベンゾジアゼピン系の睡眠誘導剤で、中枢神経に作用して大脳辺縁系の活動を低下させることにより、不安や緊張を和らげたり、睡眠を促す。通常、不眠症の治療や麻酔前に用いられる。
同社は、医薬品を服用した患者から複数の副作用報告を受け、社内調査を行ったところ、リルマザホンが通常の臨床用量を超える成分量の混入が判明。当該ロットの自主回収を決めた。
当該ロットを服用している患者には、すぐに服用を中止し、残薬については処方元や薬を受け取った薬局への返却、服用した場合は自動車の運転や危険を伴う機械の操作は避けることやアルコールにより薬の作用や副作用が強まることがあるため、飲酒も避けるよう呼びかけた。
また、患者への薬代などの補償については、服用した製剤の回収を行い、他社が販売している製品への代替処方が必要となる場合に補償を行う方針。
小林化工は、この10年間で積極的に設備投資を行い、本社棟や医薬品製造工場、信頼性保証センター、製剤研究所など七つの棟を建設し、将来の後発品の需要拡大に対応するため、安定供給体制を強化してきた。昨年には総合リース企業「オリックス」の子会社となり、新たな体制での事業展開を開始していた。
同社は、今回の睡眠薬の混入について、「製造ラインにイトラコナゾールの原薬を入れるべきところをリルマザホンを取り違えて入れてしまった」と説明。「作業中の人為的なミス」と認めており、今後の再発防止に向けては「1人でチェックしている部分を2人でチェックする体制に改めていく」としている。
■承認書にない工程発覚‐100mgなども回収へ
7日には、社内で同剤の製造実態を調査した結果、「イトラコナゾール錠50『MEEK』」に関する「T0EG08」以外の全ロット、同錠100「MEEK」、同錠200「MEEK」について、承認書に記載のない工程を実施していることも判明。これら製品の有効期限内の全ロットを自主回収(クラスII)すると発表した。今後の対応としては、クラスIの自主回収を最優先に進め、クラスIIの自主回収を行う方針である。
原薬投与後、製造工程中に原薬の用量が減るためにもう一度追加投与する特殊な製造方法が必要になるが、同社によると「製造方法が一部変更申請されずに、承認書と齟齬が生じた」という。
医薬品の品質などには影響を与えるものではないとし、他の薬剤でも同様の事例がないか確認を進めるとしている。