5日に福岡市で開かれた日本臨床薬理学会学術総会で、製薬協薬事委員会の柏谷祐司氏(武田薬品日本開発センター薬事部)が調査結果を発表した。調査は今年9月に実施。薬事委員会に加盟する59社中58社から回答を得た。
日本の制度で希少疾病用医薬品の指定を受けるためには、▽対象患者数が5万人未満であること、または指定難病であること▽医療上特にその必要性が高いこと▽開発の可能性が高いこと――の3要件を満たす必要がある。
調査の結果、医薬品医療機器総合機構(PMDA)への相談時に要件を満たさないとされ、指定を受けられなかった品目数は過去10年間で合計86品目に達した。
その理由を聞いたところ、「医療上の必要性」の指摘が突出していた。詳しい理由として「提出されたデータでは、既存薬や既存治療と比べて著しく高い有効性や安全性を示しているとは言えない」が最も多く、「既存薬と直接比較した試験データがない」「既存薬と比較して著しく高い有効性や安全性を検証試験で示す必要がある」が続いた。
指定の未取得が開発計画に与えた影響を聞くと、▽指定のメリットを踏まえ効能追加を検討していたが断念した▽開発を中止した▽日本は国際共同計画に参加できなくなった▽開発計画が大幅に遅延した▽開発の優先順位が下がった――などの声が上がった。
一方、過去10年間で指定を受けた105品目中、欧米でも指定を得た73品目を対象に、指定の際に使用された根拠データを日本と欧米で比較した。
その結果、欧米では主に第I相試験や第II相試験のデータに基づき指定可否が議論されているものの、日本では第III相試験のデータで議論されることが多かった。
日本では、指定を得てから承認申請するまでの期間が5カ月以内の品目が全体の約60%を占め、申請間際に指定される品目が多いことも分かった。
会員企業からは「既存薬よりも著しい有効性や安全性が求められると、同程度の有効性や安全性では2品目以降は指定を受けられないため開発が促進されず、治療選択肢が長期間1品目だけになる可能性がある」「企業が開発に着手するかどうかを判断する際に希少疾病用医薬品の指定は重要で、その段階で既存薬に比べて有効性や安全性を示すことは困難」などの意見があった。
柏谷氏は「欧米では早期に指定されるため、会社としても投資を判断できる。日本だけ開発後期でなければ指定されないようでは、日本での開発が進まなくなってしまう」と懸念を示し、「できるだけ早期の指定が重要」と訴えた。