重症心不全患者の解析から、LVETc/PAWPが有用と確認
国立循環器病研究センターは12月7日、心停止や難治性心原性ショック患者に対して体外式膜型人工肺(Extracorporeal Membrane Oxygenation:ECMO)による循環補助を行った重症心不全患者の解析により、ECMOからの離脱を予測する指標として、心エコー図により計測された補正左室駆出時間(以下、LVETc)を肺動脈カテーテル検査により計測された肺動脈楔入圧(以下、PAWP)で補正したLVETc/PAWPが有用であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究センター心臓血管内科部門の澤田賢一郎医師、川上将司医師(飯塚病院循環器内科)、東北大学大学院循環器内科学分野の安田聡教授(兼国立循環器病研究センター客員部長)らの研究グループによるもの。研究成果は、英文医学雑誌「ESC Heart Failure」に掲載されている。
画像はリリースより
ECMOは、一般的に遠心ポンプと膜型人工肺を用いた人工心肺装置により、心肺補助を行う。重症肺炎などで肺の機能を補助する場合は静脈(Venous、以下V)から静脈(V)に送るV-V ECMO、心臓(循環)の機能を補助する場合は静脈(V)から動脈(Artery)に送るV-A ECMOと2通りの補助法がある。重篤な状態で装着されるため、安全に離脱する信頼できる臨床指標が求められてきた。
心原性ショックは、心臓のポンプ機能が低下することにより、全身の臓器や組織に十分な血液が届かなくなり、臓器の機能障害や意識障害をきたす。急性心筋梗塞、不整脈、心筋症などが原因となる。適切な薬物治療などを行っても治療効果が得られない場合を、難治性心原性ショックという。
簡便かつ測定者間での誤差も少なく、広く活用できる指標として期待
研究グループは、国循で2013年1月~2017年3月までに心停止、難治性心原性ショックの適応でV-A ECMOによる循環補助を行った患者50人を対象とし、離脱を予測する臨床指標を分析。その結果、心エコー図により計測されたLVETcを肺動脈カテーテル検査により計測されたPAWPで補正したLVETc/PAWPが有用であることを明らかにした。特にLVETc≧208msかつPAWP≦15mmHg群での離脱率が高く、治療の具体的な目安となる数値データと考えられるという。
補正左室駆出時間や肺動脈楔入圧の測定は、簡便かつ測定者間での誤差も少なく、V-A ECMOからの離脱を予測するに当たり、広く活用できる指標となると考えられる。現在、ECMO研究が世界的に進められているが、V-A ECMOによる循環補助に関する新たな知見として重症患者の管理に役立つことが期待される、と研究グループは述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース