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新型コロナに対する4種の抗体検出試薬を開発、全自動で迅速・簡便-横浜市大ほか

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2020年12月03日 PM12:30

高精度で迅速にNP/SP抗原に対するIgを検出

横浜市立大学は12月2日、新型コロナウイルス()に対する抗体を検出できる4種類の抗体検出試薬を開発、東ソー株式会社の「全自動化学発光酵素免疫測定装置AIA-CL2400」と組み合わせることにより、1時間で最大240テストの検体測定が可能となったことを明らかにした。これは同大学術院医学群微生物学の梁明秀教授らと、東ソー株式会社、関東化学株式会社との共同研究によるもの。研究成果の一部は、プレプリントサーバー「medRxiv」で公開されている。


画像はリリースより

一般的に、ウイルスに対する抗体は、以前にウイルスに感染した人、もしくはワクチンを接種した人の血液中に存在する。ウイルスに対する抗体は発症後約1〜2週から陽性になることが知られており、PCR検査や抗原検査と異なり、陽性であっても検査時点でのウイルス保有を意味するものではない。SARS-CoV-2に対しては、ウイルスのヌクレオカプシド(NP)抗原、もしくはスパイク(SP)抗原に対する免疫グロブリン(Ig)を検出するさまざまな簡易キットが販売されているが、2020年11月現在、日本国内において体外診断用医薬品として承認を得た抗体検出法はない。

全自動抗体検出法としては、「ARCHITECT(R)SARS-CoV-2 IgG」(アボット社)、「Elecsys(R)Anti-SARS-CoV-2」(ロシュ社)などがあり、アボット社はNP抗原に対するIgG量、ロシュ社はNP抗原に対する全免疫グロブリン量(Total Ig)を検出可能だ。いずれも専用の大型機器が必要なため検査実施機関が限られているが、米FDAの資料によれば、いずれも感度100%、特異度99.6〜99.8%と信頼性の高い検出法となっている。しかしながら、NPまたはSP抗原に対するIgGおよびTotal Igを1機種で検出できる全自動免疫測定システムはこれまでに存在しない。

抗体検出試薬の測定原理としては、IgGでは磁性微粒子に固相化されたウイルス抗原と検体中の抗体が反応し、さらに酵素標識抗ヒトIgG抗体が結合し、標識酵素が化学発光基質を分解することで検体のIgGを検出する。Total Igでは磁性微粒子に固相化されたウイルス抗原が検体中の抗体と結合し、さらに酵素標識ウイルス抗原が結合後、標識酵素が化学発光基質を分解することで検体のIgG含む総免疫グロブリンを検出する。

1機種でわずか15分で4種の抗体を検出、感度・特異度ともに100%

研究グループは、SARS-CoV-2のNP抗原とSP抗原を独自技術により作製し、これらを東ソー社のAIA-CL2400あるいは同等機種の専用試薬としての最適化を進めた。これにより、計4種類の抗体(NP-IgG、SP-IgG、NP-total Ig、SP-total Ig)が1機種で検出できるようになった。結果報告時間は15分で、迅速に結果を得ることができる。

同大でSARS-CoV-2流行以前に収集された健常人血清1,000例(バイオバンク室)と、PCR陽性が確認されたSARS-CoV-2感染者の発症後13日以降の血清153例を用いた検討の結果、4種類の抗体検出試薬は、感度・特異度ともに100%の検出性能を示した。また、同試薬を用いて測定された抗体価は、アボット社やロシュ社の機器で測定された抗体価と高い相関性を確認した。これらの結果から、今回開発した抗体検出用試薬は、既存海外メーカー製のものと同等以上の性能を示すと考えられるという。

東ソー社、NP-IgGおよびNP-Total Igの試薬を販売開始

これらの技術を用いて、2020年9月から新型コロナウイルス感染症()から回復した人を対象に大規模な抗体検査プロジェクトを実施している。今後、これらのデータが示す意義について検証することで、COVID-19に対する免疫反応の解明につながることが期待される。

研究グループは、今回の研究結果に基づいたCOVID-19発症や重症化、治療効果予測、感染防御能との相関等について引き続き検証を行い、今後も、臨床検体の分析を通じた本抗体検出法の実用化に向けて、開発した測定システムが速やかに社会実装されることを目指す。

なお、東ソー社では、NP-IgGおよびNP-Total Igの試薬を12月2日より販売開始している。

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