厚労省によると、2020年度上期の川下取引に関して、単品単価取引の割合は20店舗以上の調剤薬局で95.2%、200床以上の病院で83.3%で、前年度とほぼ同水準となった。9月時点での妥結率は95%で、昨年や一昨年と同様に9割を超える水準を確保した。
ただ、新型コロナウイルスの影響について、日本医薬品卸売業連合会は10月に会員各社に行った調査結果では、見積書の提示、妥結の時期等に関して、前年度同時期よりも遅い状況となったこと、価格交渉について前年度と同様の期間、回数を確保できていない企業が約6割を占め、交渉では医療機関の経営状況に配慮した企業が86%に上ったことなどから、「例年とは全く異なる価格交渉の状況」と説明した。
折本健次委員(日本医薬品卸売業連合会理事)は、「コロナ禍での価格交渉の回数については本当に厳しく、通常よりも早い妥結となり、丁寧な交渉はできなかった」と率直に述べた。
森昌平委員(日本薬剤師会副会長)も「川上から川下までコロナへの対応を最優先としたため、今回の結果だけで判断することは難しい」とした。
この背景を踏まえ、三村優美子座長(青山学院大学名誉教授)は、上期の数値について「ほぼ例年並みだが、非常にイレギュラーな状況の中で関係者の努力で作られたもので、注意して取り扱いたい」とまとめた。
一方、19年度の川上取引の状況では、仕切価率94.9%、納入価率92%、割戻し率5.9%と、前年度と同様の数値だったことを踏まえ、小山信彌委員(日本私立医科大学協会病院部会担当理事)は「15年度から横ばいが続いている。川下には様々なペナルティがあるにも関わらず、川上が全く改善されていないのに評価することは疑問だ」と厳しく指摘した。
また、日本製薬工業協会が進める割戻し等に関する見直しについて、宮川政昭委員(日本医師会常任理事)は「方向性だけでなく、具体的な数値が出るところまで速度を上げて整理すべき」と注文をつけた。
■迫井医政局長、談合疑惑に危機感
この日の懇談会では、厚労省の迫井正深医政局長が冒頭のあいさつで、医薬品卸大手4社の談合疑惑に言及。
「事実であれば、これまで流通関係者が信頼関係のもとで進めてきた流通改善の取り組みを根底から覆されかねないとの強い危機感を持っている。捜査中であっても、コロナ禍でも流通改善の取り組みが後退することがあってはならない。改めて前に進める必要がある」とした。