理化学研究所は、富士通と共同開発したスーパーコンピュータ「富岳」が世界のスーパーコンピュータの性能ランキングである「TOP500」リストで、2期連続の世界第1位を獲得したと発表した。産業利用などアプリケーション処理性能や人工知能(AI)の深層学習での計算性能などの指標においても、それぞれ2期連続の世界第1位を獲得。6月の前回ランキング時点から大きく性能を向上していることが示され、今後、新型コロナウイルス感染症など社会問題の解決手段として利用が進む可能性がある。
「富岳」はスーパーコンピュータ「京」の後継機で、6月のランキングでは主要なベンチマークで世界1位を独占した。今回のTOP500ランキングでは、プログラムを処理する際の実行効率が82.3%と前回6月時点での80.87%を上回る測定結果を示し、世界2位である米国の「サミット」に約3倍の性能差をつけ、「京」と比較して42倍以上の性能向上を達成した。
アプリケーションの処理性能を評価する「HPCG」ランキングでは、2位のサミットと約5.5倍の性能差をつけ、AIの計算などで活用されている単精度や半精度演算器などを加味した計算性能を評価する指標「HPL-AI」ランキングではサミットに約3.6倍の性能差をつけた。
大規模で複雑なデータ処理が求められるビッグデータ解析の重要な指標「Graph500」でも世界1位を達成し、「京」の3倍以上の性能を有することが示され、総合的な高性能を実証した。
「富岳」は5月に理研に設置後、2021年度からの共用開始を目指し開発・整備が進められていたが、新型コロナウイルス感染症対策に高い演算機能を活用するため、前倒しで稼働している。
新型コロナウイルス感染症対策として「富岳」を利用した研究が始まっており、既存薬から新型コロナウイルス感染症に効果が見込まれる治療薬候補を突き止めることにも成功した。