例外ではない「研究活動」、行動規制による影響の実態は?
東北大学は11月19日、新型コロナウイルス感染症対策としての行動規制(COVID-19規制)が研究者に及ぼした影響についてアンケートによる実態調査を行った結果を発表した。この研究は、同大災害科学国際研究所(IRIDeS)の三木康宏講師、中鉢奈津子特任准教授、今村文彦教授、伊藤潔教授、同大学院医学系研究科の八重樫伸生教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Progress in Disaster Science」に掲載されている。
新型コロナウイルス感染症禍において、感染防止のための規制による不自由な生活を余儀なくされてきた。「不要不急」の外出が制限される中、研究活動も例外ではない。COVID-19規制によって研究者が負の影響(ハラスメントを含む)を被った場合、コロナ禍が終息してもその影響は長期にわたり、さらなる研究活動に支障をきたすのではと懸念される。その問題意識のもと、研究グループは、COVID-19規制が研究者に及ぼす影響について実態を明らかにするための調査を行った。
「仕事へ影響があった」「ハラスメントを受けた・与えた」割合が高い
まず、全国の20才以上の1万557人(うち研究者:1,963人)を対象とした調査(期間:2020年6月15日から19日)を行い、結果を分析したところ、COVID-19規制下において「仕事もしくは研究活動への影響があった」「ハラスメントを受けた・与えた」の割合が、いずれも研究者のグループでより高い結果となった。
さらに、上記調査対象者のうち研究者300人(学術機関・企業双方を含む)に対し、研究モチベーションに関するより詳細な質問を行った。その結果「ハラスメントを受けた」とした割合は男性よりも女性で高く、研究に対するモチベーションの「著しく低下した」と「低下した」を合計した割合も女性で高かったのに対し、「著しく低下した」の割合だけで見ると、女性よりも男性で高かったことが判明した。さらに、COVID-19規制による研究活動の制限が高かったグループでは、「将来の不安」と「研究モチベーションの低下」が、いずれも高いことが明らかとなった。また、上記研究者300人からの将来の不安等に関係する自由記載回答を分析したところ、このコロナ禍で3密環境での研究やオンライン授業の負担など、研究者のさまざまな問題が挙げられていた。
研究者は研究資金の獲得や業績へのプレッシャー、ポストの確保など、常に不安定な心理にあると言われている。今回の調査から、COVID-19規制がさらにその不安定な状況に拍車をかけたのではと考えられる。研究グループは、「今後、より詳細な調査を行い、コロナ禍における研究者のサポートの重要性を明らかにしていきたいと考えている」と、述べている。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース