医療用医薬品の薬価算定をめぐっては、薬学や医療経済学等の専門家で構成する薬価算定組織が具体的な算定案を検討した上で、中央社会保険医療協議会に報告している。
ただ、厚労省は、委員名簿や議事概要等について、企業秘密や「意見交換に支障が生じる可能性がある」ことを理由に非公開としている。情報開示請求が行われた場合には、製薬企業に競争上の不利益を与える可能性がある情報をマスキングした上で、議事録を開示している。
この日のレビューでは、薬価算定組織が透明性確保の観点から非公開となっている現状が論点となった。評価者の伊藤由希子氏(津田塾大学総合政策学部教授)は「情報開示請求で公開するのであれば、結局は公開しても良いのではないか。国民に対して透明であるべき薬価だからこそ、委員も責任と立場を自覚するよう委員名簿等を公開すべき」と要求した。
佐藤主光氏(一橋大学国際・公共政策大学院教授)も「公開を原則とし、非公開の場合はきちんと理由を説明する手順を踏むべき」と求めるなど、評価者からは原則公開に切り替えるよう迫る意見が相次いだ。
これらの意見を受け、厚労省保険局の井内努医療課長は「審議概要、委員名簿、利益相反等の情報は公開する方向で進めたい。どこまで公開できるかは各企業と相談し、非公開とした理由を説明する」と応じた。
一方、類似薬がない品目に適用される原価計算方式について、研究開発費などが含まれる製品総原価の開示度が低い現状を受け、適正な価格算定ができているかも論点となった。
土居丈朗氏(慶應義塾大学経済学部教授)は「製薬企業が出した数字を鵜呑みにしている現状では、誰がチェックをしているのかということになる。守秘義務をかけることを条件に、薬価を決める権限を持つ部署には情報開示する制度設計がないといけない」と問題提起した。
伊藤氏は「厚労省ですら価格の算定根拠を知らないのは由々しきことだ。結局は企業の言い値でも飲まざるを得ない」と厳しく指摘し、河村小百合氏(日本総合研究所調査部主席研究員)も「企業から出される情報でも国がしっかり裏を取ることが必要」と訴えた。
これらを踏まえ、取りまとめ評価者の土居氏は、薬価算定組織について「審議概要や委員名簿等が原則開示されていないのは大変問題で、早期に公開すべき。費用対効果評価専門組織も同様だ」と結論づけた。
原価計算方式に関しては、「製薬企業は薬価算定する権限を持つ部署にきちんと原価等の情報を開示し、適正な算定に資する取り組みを進めてほしい。開示度が低い品目は、さらに厳しく薬価を引き下げる仕組みを検討すべき」とした。
河野太郎行政改革担当相は「医療費が大きく膨らむ中、どう適正化するかは国民の大きな関心事。情報公開はきちんとすべきであり、厚労省には対応をしっかりとお願いしたい」と述べた。