厚生労働省や文部科学省などの関係閣僚と製薬業界が政策について意見交換する「革新的医薬品等創出のための官民対話」が16日に開かれ、イノベーションの強化に向けた今後の方策について製薬業界からヒアリングを行った。業界側からは、2021年4月に予定される中間年改定への慎重な対応や、新型コロナウイルス感染症、多剤耐性菌(AMR)などの感染症対策、データの利活用などイノベーションを促進する環境整備を要望する意見が多く挙がった。
この日の対話では、「イノベーション強化に向けた今後の方策」について、日本製薬団体連合会など産業界、国立がん研究センターなどアカデミアから課題や要望をヒアリングした。
日薬連と日本製薬工業協会からは、「厳しい内容の薬価改定が続いたため、中間年改定が行われると業界に与える影響も大きく、慎重な対応をお願いしたい」と要望した。
日薬連の手代木功会長は、「AMRの治療薬開発体制が弱体化している。5~10年の計で取り組みが必要」と国が主導した取り組みを求めた。過去の新型インフルエンザワクチンの設備投資を例に、「その後の使い道がメーカー任せになってしまったので、前回の反省を踏まえた対応が必要」と指摘した。
製薬協の中山讓治会長は、「日本人の全ゲノム解析が進んでいない」との問題を提起し、「製薬企業にとって使いやすいものにしてほしい」とゲノム解析事業の推進を要請した。
また、政府の行政改革推進会議「秋の行政事業レビュー」において原価計算方式で算定された医薬品の薬価で製品総原価の開示度の低さが指摘されたが、「当局がチェックした上で原価の開示を行っている」と説明した。
田村憲久厚生労働相は、「中間年改定の懸念は認識している。イノベーションの評価で厳しい意見が出たが、財源に限りがある中でイノベーションの推進と国民皆保険の維持の両立が大切になる。素晴らしい医薬品が日本から出るように対応したい」と述べた。