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長期維持可能なヒトiPS細胞由来高純度心室筋細胞作製技術を開発-CiRA

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2020年11月17日 AM11:45

精製のステップなしに高純度状態を長期間維持培養可能な心筋細胞を作製

京都大学iPS細胞研究所()は11月13日、ヒトiPS細胞から長期維持可能な高純度心室筋細胞を作製する技術を開発したと発表した。この研究は、CiRA増殖分化機構研究部門の山下潤教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。


画像はリリースより

ヒトiPS細胞からの心筋細胞は、心臓毒性スクリーニング、創薬、疾患モデリングなどへのさまざまな応用が期待されている。そのため、高純度のヒトiPS細胞由来心筋細胞の安定した作製は、ますます需要が高まっている。しかし、現在のヒトiPS細胞からの心筋細胞の作製方法では、ヒトiPS細胞をすべて心筋細胞に分化させられるわけではないため、高純度の心筋細胞を確保するために、作製の最終段階に精製ステップが必要となっている。また、これらの方法で作製された心筋細胞には、生体の心室筋細胞様、心房筋細胞様、ペースメーカー細胞様など、さまざまな性質を有する細胞が混ざり合って構成されていることが知られている。

研究グループは今回、これまでの分化誘導方法を手掛かりにして、心筋細胞の精製ステップなしに高純度の心室筋細胞を作製する方法の開発を試みた。

長期間の維持培養により、形態学的および電気生理学的成熟を確認

研究グループは、これまでの心筋分化誘導方法を手掛かりに、心筋細胞への分化能を有する中胚葉細胞集団(血小板由来成長因子受容体-α(PDGFRα)陽性細胞)を誘導および収集し、2種類のWntシグナル阻害剤(XAV及びIWP4)を用いて選択的に分化段階に応じた刺激を与え、強力に心筋細胞へ誘導することにより、高純度の心筋細胞を作製することに成功した。

この改善された心筋細胞の作製方法では、高純度の心筋細胞が安定して得られるだけでなく、心筋細胞の精製ステップなしに、200日を超える長期間培養においても高純度の状態を維持し続けたという。さらに、これらの心筋細胞のほとんどは、心室筋の特異的マーカーであるミオシン軽鎖(MLC)2vを発現し、長期間の培養によってその発現はより特異的になった。

また、長期培養した心室筋細胞は、横紋(サルコメア)構造の成熟化(Z帯、M帯などの形成、サルコメア長の延長)、ミトコンドリアの増加・成熟化、さらには成体の成熟化した心筋細胞の構造であるT管様構造を認めた。電気生理学的にも心室筋細胞の成熟の特徴である最高拡張期電位(MDP)の低下、電位ピーク(Peak)、AP増幅(APA)及びAP上昇の最高上昇速度(dV/dtmax)の上昇を示し、QT延長を示す薬剤に対しても、生体の心室筋と同様の反応を示したとしている。

心臓毒性試験、疾患モデリングなどの新たな研究用ツールとしての応用に期待

今回の研究で改善された心筋細胞の作製方法により、高純度の心筋細胞を安定して作製することが可能となり、心筋細胞の精製のステップなしに高純度状態を200日以上の長期間維持培養することが可能となった。加えて、作製した心筋細胞は心室筋様の表現型を示し、形態学的および電気生理学的成熟が確認された。「この作製技術は、心臓毒性試験、疾患モデリングなどの新たな研究用ツールとしての応用が期待される」と、研究グループは述べている。

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